フィリー・ソウルを体現するユニティー……MFSBとは?
〈Mother, Father, Sister, Brother〉の頭文字を取ってMFSB。シグマ・サウンド・スタジオを本拠地にしていた人種混成のミュージシャン集団で、フィリー・ソウル作品のバック演奏を務めるとともに、自己名義のレコードもリリースしていた。まとめ役であるギャンブル&ハフ及びアレンジャーのボビー・マーティン以下、時代によってメンバーの変動はあるものの、中核となったのは、ノーマン・ハリス、ボビー・イーライ、ローランド・チェンバース(以上ギター)、ロニー・ベイカー(ベース)、アール・ヤング(ドラム)、レニー・パキュラ(キーボード)、ラリー・ワシントン(パーカッション)、ヴィンセント・モンタナ(ヴァイブ)といった面々。そこにドン・レナルド率いるストリングス隊やジャック・フェイスらのホーン奏者が参加していたわけだが、以上の面々は68年にヒットしたクリフ・ノーブルズ“The Horse”で顔を揃えていたと言われている。主要メンバーは各々がプロデューサー/アレンジャーとしての顔も持ち、ソロ・アルバムを作る者までいたが、とりわけBHYことベイカー=ハリス=ヤングの3人はギャンブル&ハフ並みのプロデュース手腕を発揮し、多くの傑作を生み出した。MFSB名義では“T.S.O.P.(The Sound Of Philadelphia)”“Love Is The Message”などのほかに、ソウルやポップスのスタンダードなども演奏。70年代後期に主要メンバーがサルソウル・オーケストラに移動してからはデクスター・ワンゼルらを中心とするフュージョン色の強いバンドとなったが、いずれにせよフィリー・サウンドとは、このMFSBの演奏のことにほかならないのである。
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