GAMBLE & HUFF
ソウル界の生ける伝説に奇跡のインタヴュー!
フィリーならではのアイデンティティー
フィラデルフィアという地名は、それ自体がすでに甘美な響きに満ち溢れている。フィラデルフィア・サウンド。フィリー・ソウル。あなたがしっくりくるものを用いれば呼び名は何でも構いやしない。ただ、それを生み出した2人の〈神様〉をわれわれは忘れるわけにはいくまい。ケニー・ギャンブル&レオン・ハフ。言うまでもなかろう、70年代に一世を風靡したフィラデルフィア・インターナショナル(以下PIR)の設立者にして、フィラデルフィアという地をソウル・ミュージックの都たらしめた2大パイオニアである。ここ最近の〈ネオ・フィリー〉と称される同地の興隆も、彼らが作った轍があってこその産物だ。だからこそ、この地に脈々と息づくミュージシャンズ・スピリット、そしてフィリー・マインドに触れるべく、ここで改めて彼らの言葉に耳を傾ける意義は果てしなく大きかろう。……などと、簡単に言ってしまってはみたものの、正直なところ彼ら2人揃ってのインタヴュー(場所はPIRの本社)が実現してしまうこと、これがいかなる一大事か、本当は身の引き締まる思いで一杯なのである。
まず最初に自分たちのレーベル・ネームにあえてフィラデルフィアの地名を入れた理由を語ってもらおう。やおら口を開いたのはケニー・ギャンブルだ。
ケニー・ギャンブル(以下ギャンブル)「そうだね、〈フィリーから音楽を発信させるんだ〉って意気込んでいたし、フィラデルフィアを音楽の街として活性化していきたいとずっと思ってたからね。それこそが僕たちのアイデンティティーだったんだろうね。フィラデルフィアを代表するのは僕たちだっていうことがさ。モータウンにはモータウン・サウンドがあったみたいに、僕らはフィリー・サウンドっていうものをどうしても生み出したかったんだ。メンフィスにはメンフィス・サウンド、ナッシュヴィルにはナッシュヴィル・サウンド……それぞれの街がクリエイティヴなものを通して自分たちのアイデンティティーを見つけだそうとしてたのとまったく同じことだよ」
これに対してレオン・ハフはモータウンという言葉にすぐさま反応し、「PIRは単にモータウンに憧れていただけではなく、PIRならではのやり方でモータウンとは異なるサクセス・ストーリーを綴ったんだ」という誇りにも近い思い出を次のように語ってくれた。
レオン・ハフ(以下ハフ)「たとえフィラデルフィアを代表したいなんて格好をつけたところで、とりあえずはヒットを出さなければ話にならなかったんだ。だから、まずはビルボードとキャッシュ・ボックスのベスト100内にランクインするヒットを作ることをめざしたね。むろんモータウンのことは尊敬してたさ。でも、僕たちの音楽のやり方はモータウンとは違ってたんだよな。(PIRを設立した頃は)モータウンはまだ45回転モノのシングルに力を入れていてね。で、僕たちPIRはアルバムの時代の到来を痛感していたんだ。そればかりじゃなく、モータウンではまだモノラルが中心の制作だったけど、PIRはステレオ中心のレコーディングを積極的に進めてたし。当時のステレオとモノラルっていったら凄い違いだよ。それから、モータウンはまだAMラジオ中心のプロモーションをしていたんだけど、PIRはもっと幅広いターゲットを狙えるFMに焦点を絞ったプロモーションを心掛けていたんだ」
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