Illadelphia Another Face 世界に繋がるもうひとつの〈ネクスト・フィリー〉
フィリ-、といっても何もR&B/ヒップホップだけではない。70年代フィリ-・ソウルがその後サルソウルなどへ派生し、ディスコ道、あるいはジョー・バターンやキャンディードのようなラテン/ブーガルーも輩出したのは見逃せない。ただ、これはメルティング・ポットなNYが一大音楽発信源だった頃のハナシで、現在に照らし合わせるなら、フィリ-からNYに出向くだけでなく、国境もジャンルも越えるのがブロードバンド世代の〈イマのフィリ-〉ではないだろうか。
最重要人物、キング・ブリット
まず、もっとも活躍、というか日本での支持率が高いのはキング・ブリット。ディガブル・プラネッツのDJを務め、ジョシュ・ウィンクとオヴァムをスタートさせ、自身もシルク130名義でアルバム『When The Funk Hits The Fun』をリリース。その後オヴァムがメジャー(コロムビア)配給を受けたことで本格的に注目を浴びることとなった。その後の活躍は言わずもがなだが、この2、3年はそこら中でブリット/スクーバ両名義でリミックスしまくり。最近ではイタリア籍の西ロン・レーベル、アーカイヴからミックス名義でそちら感性の“Give It All”をリリース、ブリット流コスモ・アフリークなオバ・ファンケのアルバムはロンドンのカーマ・ジラフから、加えて最近米西海岸のオムから(初期中心だが)スクーバ名義作品集を出したので、それらで守備範囲の広さはチェックできる。そういえばシルク130の2作目『Re-Members Only』はサンフランシスコのシックス・ディグリーズからだった。逆にバック・トゥ・フィリ-でフィラデルフィア・エクスペリメントや、つい最近ヒドゥン・ビーチからデビューのキンドレッドのリミックスなどなど、とにかく仕事が多くて書き切れないです。なお、オヴァムはハイブリッドなクラブ・ミュージックを提供するレーベルで、地元の才のみならず、積極的に海外の才能を紹介する、ディープからハードめのテック・ハウス専門という観。オヴァムがなかったら、〈イマ〉の自由な感性で世界を股にかけるフィリ-勢も存在しなかったのでは?
キング・ブリットのニュー・アルバム『King Britt Presents Black To The Future』(Baak/handcuts)