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Illadelphia Musical Atlas 観光には役に立たないイラデルフ音楽世界地図(2)

カテゴリ : フィーチャー

掲載: 2002年10月17日 18:00

更新: 2003年03月20日 15:10

ソース: 『bounce』 235号(2002/8/25)

文/林 剛

THE STUDIO
 ルーツを筆頭に、ネオ・フィリーのミュージシャンが集う、いまフィリーでもっとも熱いスタジオ。6年ほど前、ラリー・ゴールドがエンジニアのジョン・スメルツと共にオープンさせた。名前がシンプルすぎるので、〈ラリー・ゴールド・スタジオ〉とも呼ばれる。ミュージックやジャグアー・ライトなどのネオ・フィリー勢はもちろん、R・ケリーやドゥルー・ヒルなどの外部アーティストも、ラリーのストリングスやジョンのミックスを求めてやってくる。ロドニー・ジャーキンスもここの愛用者のひとり。日本人ではDJ KRUSHとトシ・クボタもレコーディングに訪れたとか。場所は、観光名所であるエドガー・アラン・ポーの家を300mほど南下したところにそびえ立つキャロウィル・センターという巨大ビルの3F。同ビル2Fにはルーツのレーベル、モーティヴと〈okayplayer.com〉のインターネット業務を行うオフィスがある。

ELECTRIC FACTORY
 ザ・スタジオの隣にあるヒップなライヴハウス。オープンは68年。ラリー・ゴールドいわく「いちばん古いヒッピーの場所さ。ジミ・ヘンドリクスとかクリームとか、そういう人たちのためにオープンされたんだ。僕が昔組んでいたウッディーズ・トラックストップ(トッド・ラングレンも参加!)もここでプレイしたよ」とのこと。かつては〈サイケデリック・ボールルーム〉と呼ばれていたようで、現在もメジャーなヒップホップやロックのライヴが行われている。今年2月にはNBA主催のフィリー・オールスター・ライヴが行われた。タワー・シアターやTLAもここの系列。

TLA (Theater Of Living Arts)
 古着屋や中古レコード屋などが並ぶサウス・ストリートにある小バコのライヴハウス。周囲のファンキーな雰囲気に合わせたヒップなアーティストを招いているようで、地元の音楽好きな若者が集う。写真を撮影した昨年12月にはフィラデルフィア・エクスペリメントやビラルなど地元アーティストのライヴが行われ、ビラルの前座には、彼の楽曲を書いていたマーシャ・アンブロウジアス(フロートリー)が登場するなど地元ならではの演出も。フィリー出身のアーティストにとってはもっともリラックスできるライヴハウスかもしれない。

TEMPLE UNIVERSITY
 ノース・フィリー一体に広がるテンプル大学。音楽大学ではないが、ここに通っていたミュージシャンは多く、ダリル・ホールとジョン・オーツのふたりが出会ったのもこの大学だった。また、ジャネイのふたりもここの出身で、在学中にはDJジャジー・ジェフ&ザ・フレッシュ・プリンスのレコーディングに参加。さらにジル・スコットやジェイムズ・ポイザーも……というように、みなさん優秀な方ばかりです。

A TOUCH OF JAZZ STUDIO
 ザ・スタジオの3ブロック東にあるのが、ジャジー・ジェフが経営するこのスタジオ。ATOJのオフィスも兼ねていて、保険会社なんかが入居しているごく普通のビルの地下1Fに、歯科クリニックや画廊と並んでいる。ジル・スコットのデビュー作など、ここから数多くの名作が誕生した。ラリー・ゴールドのストリングスが必要な時はザ・スタジオへ徒歩5分。便利だ。ジャジー・ジェフも「お互いのスタジオに遊びに行くし、いつもコミュニケーションを取ってるよ」と、仲が良さそう。それにしても、歯を削るキュイィ~ンという音が洩れ聞こえる薄暗い地下倉庫のような場所で、マイケル・ジャクソン“Butterflies”のようなジャジー・メロウなトラックが作られていたとは……意外。

SIGMA SOUND STUDIO
 名曲の数々が吹き込まれた伝説のスタジオ。オープンは68年。敏腕エンジニア、ジョー・ターシャが〈サウンド・プラス〉というスタジオを買い取り、ギリシャ料理店で目にした〈Σ〉の文字をヒントに、シグマ・サウンド・スタジオと名づけた。MFSBの本拠地で、60~70年代には、あの華麗なサウンドを求めて各地から多くのアーティストがレコーディングに訪れている。ヴィレッジ・ピープルの“Macho Man”なんかもここで録音。デビュー前のダリル・ホールが修行を積み、清掃アルバイトだったイヴリン“シャンペーン”キングがスカウトされた場所としても有名。中華街のそばにあり、住所の〈212N.12th〉はサルソウル・オーケストラの曲タイトルにも使われている。昨年まではシグマ・サウンド・サーヴィスという名称だったが、最近シグマ・サウンド・ハウスと正式名称を変えた。

UPTOWN THEATER
 テンプル大学のほど近く、ノース・フィリーの黒人街にあるコンサート・ホール。50~60年代にはJBやモータウンなどのソウル・レヴューが夜ごと行われていた。言ってみれば〈フィリー版アポロ・シアター〉。タレント・ショウなども開かれ、テンプル大学の学生だったダリル・ホールはテンプトーンズというヴォーカル・グループで準優勝を勝ち取っている。また、劇場の専属バンドだったサム・リード・オーケストラには、アール・ヤングなど後のMFSBメンバーも多数在籍していた。後にレイレッツ(レイ・チャールズのコーラス隊)となる黒人ガール・グループ、クッキーズがレイに見初められたのもここ。現在は入口が塞がれ、廃墟みたいになっているのがちょっと寂しい。

SILK CITY LOUNGE
 タッチ・オブ・ジャズ・スタジオを北上したあたりにあるフィリーの名門クラブ。ここではかつてキング・ブリットらによるパーティーが行われており、アーシュラ・ラッカーやクエストラヴ、ジャジー・ジェフ、アンドレ・ハリスらがたむろしてシルキーな夜(?)を過ごしていた。ポエトリー・リーディングなども行われ、アートな雰囲気を求める若者たちが集っている。

THE FIVE SPOT
 毎週火曜夜に、あの〈Black Lily〉(女性優先のオープン・マイク・イヴェント)が行われている、いまフィリーでもっとも話題のクラブ。デラウェア川沿いにある歴史地区(オールド・シティー)のバンク・ストリートという小路にひっそりと建つ。ジル・スコットやジャグアー・ライト、ジャジーファットナスティーズなどなど、ネオ・ソウル系の女性アーティストのほとんどがここでマイクを握っている。デビュー前のインディア・アリーもアトランタからここを目がけてやってきたそう。会場ではプロ/アマ問わず、歌う気さえあれば参加自由。毎週日曜夜にはダイス・ロウがホストを務める〈ラップ・ナイト〉も行われている。2Fがイヴェント・スペースで、1Fはお洒落だけど気取ってないラウンジ。クエストラヴも普通にDJやってます。

OLD CITY
 合衆国誕生の地でもあるフィラデルフィアは、歴史の薫りが高い街。特にデラウェア川岸のウォーター・フロント地区は石畳の小径も美しく、リバティー・ベル(自由の鐘)記念館やインディペンデンス・ホール、ベンジャミン・フランクリンの家など、ド観光スポットが目白押し。フィリーの子供たちにとっては遠足の定番コースでもあるようだが、ここらへんの歴史地区についてちょっと皮肉交じりに詠んでいるのがアーシュラ・ラッカー。リバティー・ベルでの記念撮影もいいけど、彼女の“Philadelphia Child”にも、とりあえず耳を傾けておきたい。

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