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カテゴリ : フィーチャー

掲載: 2002年10月17日 18:00

更新: 2003年03月20日 15:10

ソース: 『bounce』 235号(2002/8/25)

文/林 剛

理想のサウンドは自分で作るべきだ

ATOJというプロダクションが設立されたのは、今から12年ほど前のこと。設立当初は、現在ヴィクター・デュプレーの名前で知られるヴィクター・エマニュエル・クックやジェイムズ・ポイザーらも在籍していた。

「ATOJのメンバーはそれぞれが違う音楽性を持っている。ATOJは、どこの出身であろうと、ハートにソウルがあって、無限の可能性を秘めた人物を探してるんだ。(以前いた)クレイグ・キングなんかテネシー出身だったよ。ジェイムズとヴィクターはもう離れているけど、そういえば彼らがいるアクシス・ミュージックの社長(チャールシー・チャールズ)はケニー・ギャンブルの甥なんだ」。

ジェフいわく、ATOJは「若手のソングライターやプロデューサーのための音楽大学」なのだそう。そういえば、ジル・スコットのデビュー作で名を上げたアンドレ・ハリスとヴィダル・デイヴィス、それにアイヴァン・バリアスとカルヴィン・ハギンズも先日〈卒業〉している。

「しばらくすると、みんなも自分でATOJみたいなものをやりたくなるんだ。アンドレとヴィダルはATOJを卒業して自分たちで会社を起こしたし、アイヴァンたちもATOJを離れて自分たちのプロジェクトをやっている。それでも彼らとはいまでもいっしょに仕事をしてるよ」。

卒業生の顔ぶれを見てもわかるように、ATOJのクルーは優秀な演奏者であり優秀なエンジニアでもある。

「実は、ATOJに入った時は、みんなそこまで優秀じゃないんだよ(笑)。ATOJを離れていく時に優秀になってるのさ(笑)。俺には自分の理想のサウンドは自分自身が作り出すべきだという持論がある。だから若手のミュージシャンにも機材をよく理解するように教えているよ」。

そこで気になる現在のATOJ主要メンバーだが……。

「まずジル・スコットの音楽ディレクターを務めるピーター・クーズマ。プロデューサー/キーボード奏者のアンソニー・ベル。それにP・スムーヴァことパット・マクレイン。彼は凄くディープでドープなプロデューサーだよ。あと、ケヴ・ブラウンやケン・ウッド、シンガーのVやラヒーム・デヴォン、女性ヴォーカリストのタンズもいれば、MCのシェフ、ポーリー・ヤムズ、ベイビー・ブラックもいる。みんな違うフレイヴァーを持ちながら共通したヴァイブを持ってるんだ」。

こうした面々が参加して今回の『The Magnificent』は作られているのだが、アルバムでは自身のターンテーブリスト的な先鋭性を生かしつつ、ヒップホップやR&B、それにマスターズ・アット・ワーク(MAW)とのストレートなハウス曲までをスムーズにまとめあげている。

「このアルバムにフィーチャーした音楽要素は、どれも俺の一部。だから、それらを組み合わせて一貫性を出すことはそんなに難しいことではなかったよ。MAWがソウルを愛しているように、俺はハウスが大好きなんだ。彼らとは音楽的な兄弟のような関係さ。彼らも俺もDJでありながらプロデューサーだしね。ケニー(・ドープ)とルイ(・ヴェガ)には早く〈Nuyorican Soul 2〉をやろうって頼んでるんだ(笑)」。

ニューヨリカン・ソウルといえば、フィリー勢ではジェフの他にヴィンセント・モンタナが参加していたが、そのモンタナがいたMFSB~サルソウル・オーケストラのチェロ奏者=ラリー・ゴールド(アルバムにも参加)は、現在のフィリー・シーンの裏ボス的な存在でもある。

「ラリー・ゴールドはフィリー・サウンドに欠かせない人物なんだ。彼は昔からずっとストリングスを手掛けてるだろ。古い世代と新しい世代のミュージシャンの演奏をミックスするっていうのがおもしろいんだ。フィリーから出てくる音楽にはトレードマークとなるサウンドがあって、それらが俺らの一部になってるんだよ」。

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