The White Stripes(2)
赤と白の魔術
97年にはライヴ活動を開始。シングル盤を自主制作し、徐々にホワイト・ストライプスは部屋から外界へと脱出を試みる。最初から熱狂的に迎え入れられたわけではなかったようだが、98年には多くの優秀なバンドを見い出してきたインディー・レーベル、シンパシー・フォー・ザ・レコード・インダストリーと契約し、アルバム・デビュー。その翌年、ペイヴメント、スリーター・キニーそれぞれのツアーにオープニング・アクトとして起用されたことがきっかけで、一気に知名度が広まった。
そうだ。ホワイト・ストライプスのパフォーマンスの重要な要素である白と赤で統一されたファッション・センスについても訊いておいたほうがいいだろう。海外で彼らのライヴ・パフォーマンスを観た人たちは、見た目のキュートさと演奏のダイナミックさのアンバランスにとにかく圧倒されているのだから。
「ペパーミント・キャンディーの色から単純に取っただけだけど、どうしてこのキャンディーが白と赤なのか知らないんだ。まあ、とくにどちらかが〈これだ!〉って決めたわけじゃないんだけどね。理由として言えるのは、キチンとした服装でステージに上がると、あたかもリハーサルを念入りにやってるかのような印象を確かに与えるよね……ディーヴォみたいにさ。でも、演奏を始めると全く理論的でないというか、ルールがないというギャップが僕たちにはある。僕たち自身、アルバム・ジャケットを見て〈一体このバンドの音楽はどんなものなんだろう?〉と興味をそそるバンドが好きだし、それで、自分がイメージしていた音楽からは想像もつかないようなサウンドだとなおさら良い。だからそうしたというところかな」。
かくしてブレイクした彼らに対し、その魅力を説明するための引用句として、キャプテン・ビーフハートやキンクス、戦前のブルースマン、ブラインド・ウィリー・マクテルが使われ、さらに、その豊かなメロディー・センスについては20世紀を代表する大作曲家コール・ポーターまで引き合いに出されている。彼ら自身はそうした過去からの引用句を否定も肯定もしない。
「オリジナリティーとか、そういう表現を使うとすごく安っぽいだろ。本当の意味での革新的な芸術ってのは、すごく後になってから認識されるものだし、過去にはなかった斬新なことをやってるとか、未来の音楽をやってるって言うのは危険だ。ロックンロールを再発見させてやる……みたいなのも怪しいよ」。
しかし、彼ら自身がどう感じていようと、ホワイト・ストライプスは確実に僕たちにロックンロールを再発見させつつある。
「好きなバンドはほとんどデトロイトにいるかもしれないね。ダート・ボムス、ゴリーズ、ヘンチメン……、ワックスウィングスもいい。あと、日本でも有名だと思うけどブレンダン・ベンソンは大好きなソングライターだ。まさに巨匠って感じだよ」。
ジャック自身はデトロイトとみずからの音楽性の繋がりをあえて強く肯定しなかったが、彼が挙げた名前だけで、ここで起こっている何かについて期待せずにはいられない。
最後に、今回の取材でもっともロックンロールを感じた事実を付け加えておく。ミュージシャンではなかったドラマー、メグはそれまで何をやってたのだろうか?
「姉はバーテンダーをやってたんだよ」。
かっこよすぎるね……。