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特集

オキナワの〈ハウリング・ウルフ〉、登川誠仁

カテゴリ : フィーチャー

掲載: 2002年07月03日 18:00

更新: 2003年03月20日 15:07

ソース: 『bounce』 233号(2002/6/25)

文/桑原シロー

『Howling Wolf』(98年)のなかに、“ペストパーキンママ”という、セイ小とてるりん(照屋林助)が洋楽を大胆に翻訳した痛快ソングが収録されている。てるりんが提唱する〈チャンプラ・リズム〉を体現するような一曲でもあるが、これをはじめて聴いたとき、あまりに破壊的なありさま、とくにセイ小の歌のアヴァンギャルドな響きにあっけにとられたもの。オキナワ民謡界の巨人中の巨人である登川誠仁ではあるが、その実績を超えたところでの評価を獲得している類い稀な音楽家だ。

多くの方は、大ヒットを記録した中江裕司監督の映画「ナビィの恋」で見せた快演によって彼を記憶しているのではないだろうか。あの豪傑なキャラクターは、確かに誠仁さんの素に近づけて造型されたものであった。ひとたび三線を握って一節唸れば、そんじょそこらのブルースマンでも尻尾を巻いて逃げだしてしまうほどの〈ソウル〉を発する男。その特徴的な声は歳を追うごとに苦みばしった味わいを深めている。映画のエンディング・テーマで、マイケル・ナイマンとのコラボレーション曲“RAFUTI”を発表しているが、ナイマンが誠仁さんの大きさに寄り添うようにも聞こえたものだ。

西洋音楽だろうがヤマトの電気音楽だろうが、ごくりと飲み込んでしまえる懐を持った登川音楽。CM共演経験のある中川敬が率いるソウル・フラワー・ユニオンとの共演も記憶に新しい。

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