THE NOTORIUS(2)
ピーナッツ・バター・ウルフ
故カリズマとのコンビからスタートした知る人ぞ知る時代も今は昔。いまやUS西海岸きってのターンテーブル・マジシャンであり、好きモノ心を刺激しまくるストーンズ・スロウの大首領でもあるピーナッツ・バター・ウルフ。レーベルからはルートパックやラスコ、ロブ・スウィフトなどを送り出し、みずからもプロデューサー/リミキサーとして、ハーバライザーからヴァリアス・ブレンズ、オゾマトリまでを幅広く手掛けている。シャドウやカット・ケミストらを繋ぐコネクションの核にいるような重要人物で、最近ではブレイクビーツ再現バンドのブレイケストラをフックアップしたり、レア過ぎるレア・グルーヴ・コンピを編纂したりもしている偉大なる趣味人。
左から、ラスコ『Time Waits For No Man』、ロブ・スウィフトのコンピ『Soulful Fruit』、ブレイケストラのEP『Deuces Up, Double Down』(全てStones Throw)
マッドリブ
アルカホリックスのデビュー作『21 & Over』にプロデューサーとして登場(その後も2作続けて参加)していたことでもわかるように、マッドリブはリックウィド・クルーの出身である。それ以前にはビースティ・ボーイズの2作目『Paul's Boutique』に関わっていたようなので……結構なベテランだ。ワイルドチャイルドと組んだルートパックの活躍も目覚ましかったが、次第に彼はプロデューサーとしての期待を高めていく。真摯にアートフォームを追求した結果、どこかネジが狂ってしまったようなカジモトの『The Unseen』でそれは頂点に達し、M・ブギーやカリ・エージェンツ、盟友デクレイムなどのプロデュースを手掛ける。また、全編サンプリングのジャズ・プロジェクト=イエスタデイズ・ニュー・クインテットも話題になった。アンダーグラウンド勢には珍しく、イメージ先行ではない確かなセンスと狂いっぷりがおもしろい人。
左から、カジモト『The Unseen』(Stones Throw)、デクレイム『And So It Is Said』(Grooveattack)、イエスタデイズ・ニュー・クインテット『Angels Without Edges』(Stones Throw)
DJトミーラ
アントニオ猪木がローラン・ボックに敗れた街として有名なドイツはシュツットガルトのDJ/トラックメイカーがトミーラ。レコード店を経営してUSヒップホップの流入に一役買った彼は、97年にハウスマーク『Weltwelt』とマッシヴ・トーン“Chartbreaker”を手掛けて一躍ドイツのトップ・プロデューサーに。99年には初のリーダー・アルバム『Genuine Draft』をヒットさせ、Q・ティップ&ラファエル・サディーク“Get Involved”をリミックスして日本でも話題に。作風的にはメインストリーム的なところも強いが、好みはどうやらオールド・スクール的パーティー・チューンのようで、そのへんの匙加減が個性の秘密か。なお、ハウスマークとのユニット=ターンテーブルロッカーではエレクトロを大胆に志向している。
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