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 「俺の中の境界線は、〈良い音楽か、ワックな音楽か〉だけ。だけど、ヒップホップの中で〈何がどうだ〉って定義付けること自体が、そのルールを破ることになるんだ。アートや音楽を定義付けるなんてことはできないだろう? だってそれは本来、限界のないものなんだから。もしかするとこれは宗教みたいなものなのかもしれないね。どの音楽が良くて、どの音楽がダメか、なんてのは誰にも決めつけることはできないし、むしろその人の個人的な経験がいちばん反映される選択だと思うから」(ギャブ)。

「メインストリームとかアンダーグラウンドとかいうのは単なる経済面から見た用語に過ぎなくて、音楽を形容する言葉じゃない。俺にとって音楽の判断基準は、自分の音楽的アンテナに触れるか触れないか、っていうこと。俺のアンテナに触れるのは、〈中身のある音楽〉だね。音楽を含む全てのアートに触れるなら、感動したり、なんらかの影響を受けたいと俺は思ってるから。だからこれは音楽だけじゃなくて、映画や文学にも言えることだけど」(エクセル)。

 そんな答えを聞くときが、アーティストのアーティストたる所以を、そしてフォーマット探しや理由付けに躍起になってしまう凡人の虚しさを痛感してしまう瞬間である。ともに音楽を作り始めて10年以上にもなるという彼らが、いまでもそのピュアなメンタリティーを保持したまま、このような優等生的発言を衒いもなく口にできるというのは、これまでの音楽環境がいかに健康で良質だったかということの証しであろう。今後の展開、とりわけ彼らがメジャーと結びつくことでシーンにどのような波及効果がもたらされるのか楽しみだ。ブラッカリシャスの〈燃える矢〉はどこまで飛ぶことができるだろうか?

カテゴリ : フィーチャー

掲載: 2002年05月23日 21:00

更新: 2003年03月13日 19:00

ソース: 『bounce』 231号(2002/4/25)

文/渡辺 深雪

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