SALIF KEITA インタビュー(2)
この『Moffou』が、カボ・ヴェルデの<裸足の歌姫>セザリア・エヴォラとのデュエット“Yamore”ではじまるのも、意欲的な取り組みといえるだろう。ポルトガル語圏のセザリアとの共演はちょっと意外でもあるけれど、両者の持つ哀感が見事にシンクロしている。アコーディオンの響きも効果的だ。
「私はセザリア・エヴォラが好きだ。彼女も私のことが大好きだ。私は彼女に会うたびにそう感じる。ミュージシャンだからというだけではなく、彼女の私に対する本当の愛を感じているからだ。私はそういうものが好きだ。それは私たちの心が感じている全てのことへの確証だ。私は彼女といっしょにやりたかったし、彼女も私といっしょにやりたかった。それは私がアフリカ人であることや音楽とは関係がない」。
そんな“Yamore”に続くのは、珍しくサリフ自身がひとりでアコースティック・ギターを弾き、歌う“Iniagige”だ。
「時々ギターを持って外へ出たくなる。曲を作りたい時、ひとりの時、寂しく感じる時にギターを手にする。ギターが私の慰めになってくれる。ギターは私の個人的な薬のようなものだ」。
そして“Madan”は、カマレ・ンゴニの音やカンテ・マンフィーラの弾くギターが疾走する、強力なダンス・ナンバー。この『Moffou』には大所帯のホーンズが入っていないこともあって、レイル・バンドやアンバサドゥール時代に彼が演っていた音楽とも、かなり違って聴こえる。そうした意味からすると、サリフは昔に戻ろうとしたわけではない。あくまでもいまの視点でトラディショナルな音楽性を再構築したおもしろさもここにはある。
「伝統からあまりにかけ離れたことはやりたくなかった。私は本当にトラディショナル・ミュージックを愛しているんだ。だから私が何をやっても、たとえトラディショナル・ミュージックから多少離れたとしても、またそこへ戻っていくんだ。昔はサルサやコンゴの音楽を演奏する程度で、自分たちで曲を作ろうとするミュージシャンは少なかった。いまはその逆だけどね。いいことだよ。そのおかげでマリの音楽がインターナショナルな音楽シーンに進出するようになったんだから。でも、昔は政府もそれをサポートしてくれたけど、いまじゃミュージシャンなんかにまるで興味がなくなってしまったようでね。海賊盤の規制すらしないんだ」。
そんな状況のなかでバマコに戻り、音楽シーンを活性化させようと奮闘しているサリフ・ケイタ。新作『Moffou』はバマコから届いたサリフからの近況報告だ。
セザリオ・エヴォラ『Sao Vicente Di Longe』(Lusafrica)
カンテ・マンフィーラ『N'na Niwale』(Popular African)
サリフ・ケイタの新作に参加したアーティストの作品を紹介。
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