LOKUA KANZA インタビュー(2)
新作『Toyebi Te』では、ピグミー風コーラスはあまり姿を見せず、より親しみやすいメロディーと歌が前面に浮かび上がっている。英語で歌われる7曲目の“Goodbye”などは<アフリカのスティーヴィー・ワンダー>とでも呼びたいほど優しいメロディーだ。西洋的なハーモニーとアフリカのメロディーをより爽やかに、より特化させ、一聴薄口ながら、後味には確実に<アフリカ>が残る。そして子供の囁きや森の音など環境音が効果的に使われているのはいままでどおりだ。
「新作はこれまでの延長線上にあるけど、より成熟したといえるんじゃないかな。僕がこれまで受けた音楽的影響や自分のルーツを徹底的に追求したんだ。主に愛や現代社会における孤独、家族、それからもちろん神とのスピリチュアルな繋がりについて歌っている。『Toyebi Te』というタイトルは<誰もが何者かになりたがるし、どこかへたどり着こうとするけれど、それは神のみぞ知る>という意味で、このアルバムのテーマにもなっているんだ」。
コーラスやパーカッションにロクアの兄弟であるディディ・エククアン、同郷のコンゴ出身のラッパ-であるパッシー(フレンチ・ヒップホップ・ユニット、ミニステール・アメールのメンバー)、ビレリ・ラグレーンとのデュオ・アルバムでも知られるフレンチ・ジャズ・ギター奏者シルヴァン・リュック、ブルガリアン・シンフォニー・オーケストラ、そしてロクアの娘マライカまで、ゲストの多さも今作の特徴かもしれない。だが彼らはヨソ者としてではなく、あくまでロクアの音楽をともに作りあう縁の下の力持ちとしてさりげなく参加している。
「僕にとって誰かと共演するということは、まず魂の会話であり、そしてハーモニー(調和)をとことん探求することなんだ。僕たちは違う文化に触れるとき、常に無意識で互いに影響を与え合っていると思うんだ」。
パリに移住して約20年が経ち、ザイールという地域性より自身の音楽を追求し続けたことが、汎アフリカ、さらに言えば世界中の誰にでも受け入れられるユニヴァーサルかつ内省的ポップスを生んだのではないだろうか。
「今後、アフリカン・ポップスはより開かれたものになって、いろいろな文化と混ざり合うはず。僕は安易に西洋化しようとは思わない。むしろ僕の音楽は〈僕自身=アフリカ人ミュージシャンの21世紀の姿〉を反映しているんだ。〈これはどこの国の人〉ということではなく、人類すべてがひとつの家族なんだと感じてもらえればうれしいよ」。
ロクア・カンザのアルバムを紹介
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