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カテゴリ : フィーチャー

掲載: 2002年05月02日 10:00

更新: 2003年03月12日 18:17

ソース: 『bounce』 231号(2002/4/25)

文/北村 和哉

溢れ出るエナジー

新作のジャケットを見ると、全米においてNYに次ぐ大きさの商業都市シカゴの象徴、ツイン・タワー〈マリーナ・シティー〉の上層部が写っている。その写真を使用したことについて「マリーナ・シティー。それだけだ」と短く答えるジェフ。しかし、本作の内容について「アルバムのどこからでも聴けるものにしようとした。どこを切り取ってもウィルコそのもの、そんな内容にすることだけを考えた」と説明する。もしかすると、円筒のマリーナ・シティーはそんなコンセプトを象徴しているのかもしれない、それともワールド・トレード・センター・ビルディングの代わりとしての象徴なのか……。

またアルバム制作においても、ライヴ・パフォーマンスにおいても、挑戦を忘れない彼らだが、今作『Yankee Hotel Foxtrot』のミックスを担当したのは、さまざまな方面でのコラボレーションも話題のアーティスト、ジム・オルークだ。彼についてジェフは「僕たちは実験的な音楽を作るために共同作業したのではない」と語り、「他のアーティストとコラボレートすることを、とりたてて楽しみにしているわけでもない」と念を押す。しかし、そう言いつつもジェフこそ、先のビリー・ブラッグとの共演をはじめ、ソウル・アサイラムのメンバーらとのユニット、ゴールデン・スモッグなど、コラボレートを得意とするアーティストなのではないだろうか?

「僕がそうしたセッションを続けるのは、コラボレートすることで、僕にはないなにかを得られるからかもしれないからさ。でも僕はそんな技術的なこと、取引のようなことで、他のアーティストとコラボレートしているというわけじゃないよ。ジムにしてもそう。彼と意気投合したのは、僕と彼とがともにアメリカの音楽への関心を持ち、そこにあるエナジーの同じ部分に共感していたからなんだ。よくジャーナリストから〈どんなタイプの音楽がもっとも好き?〉なんて質問されるけど、僕がいちばん大切に思っているのは、音楽が持つエナジーなのさ。その部分だけを強調してアルバムを作っていると言ってもいい」

ジェフはウィルコの音楽が実験的だと評価されることについて、いくぶん不服そうでもあった。彼によればウィルコのサウンドは「実験的ではなく、感情の起伏の表れ」なのだ。それは彼らのライヴ・パフォーマンスを観ればよく理解できる。彼らは音楽、あるいはバンドという手法を使って自分たち自身の感情をダイレクトに表現している。それは本来、当然のことなのかもしれない。しかしそういった情熱は、現在のロック・シーンにおいては忘れ去られてしまいがちなことのひとつでもあるのだ。

ウィルコの作品を紹介。

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