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ELIS REGINA(2)

闘い続けた


エリスは新人作曲家・作詞家たちを直感的に探り当て、次々と音楽シーンに紹介した。彼女が歌えば、曲は自然と評判を呼び、その作者は世の中に<発見>されることになった。だが、なぜエリスにはそんなことができたのか。彼女が音楽シーンで発していた、あの途方もないエネルギーは、いったいなんだったのか。エリスは<名実ともに国(ブラジル)を代表する女性歌手>と評された。同国には<国民的>と形容される優れた女性歌手が少なくないが、そのなかでもエリスに贈られたこの称号は、決して追従でも何でもなく、現在に至るまで人々から忘れられたことはない。彼女の歌唱自体が聴く者に強力なインパクトを与えるものだというのが、まずその理由のひとつ。そして、いまひとつの理由は、時代がエリスに要求したものに彼女が生涯を通して真っ向から立ち向かい、闘ったということだろう。それゆえ彼女は、ブラジルそのものの歴史の一部をも成しているのだ。音楽という範疇を越えて――。

そのエリスが亡くなって、今年で早20年。思い出深い彼女の命日の前後には、大小さまざまな記念イヴェントが催された。彼女の歌は、現代ブラジル史上のいくつかの重要な出来事と深く繋がりあっている。記念イヴェントには、怒濤のように過ぎ去った時代を改めて振り返りたいという、ブラジルの人々の思いも込められていたのかもしれない。彼女が駆け抜けた36年と10か月の人生、その早すぎた死については、今夏に日本でも翻訳され刊行が予定されている彼女の伝記「Furacao Elis」に詳しいが、まずは重要な点をかいつまんで紹介しておこう。

カテゴリ : ピープルツリー

掲載: 2002年04月18日 05:00

更新: 2003年03月13日 18:06

ソース: 『bounce』 230号(2002/3/25)

文/国安 真奈

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