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中谷隆保(BEAMS RECORDSプロデューサー) インタビュー

BEAMSにはいつも心躍らされずにはいられない。鍛えられた審美眼によってセレクトされたクローズ、グッズ、ファニチャーがひしめきあうショップ。スタッフの絶妙なスタイリングと体感温度をわずかだけ上げてくれる活気に満ちた音楽……。そんな BEAMSがレコード・レーベルを立ち上げたのは99年のことだ。BEAMS RECORDS第1弾リリースとなったJUN MIYAKEの『Glam Exotica!』とBEAMS EXOTICAについて、プロデューサーの中谷隆保は感慨深く語る。

「BEAMS EXOTICAのテーマは〈バーチャル・コロニアル・サウンド〉。異なったカルチャーと音楽がミックスすることによって、別の世界観が生まれるっていうコンセプトで企画され、僕にとってはメモリアルな一枚といってもいいでしょう」

ファッション・サイドから音楽へのサジェスチョンを推し進めるにあたり、彼らの根底に旅と音楽との関連は欠かせないものだったという。

「十代のときからサーフィンをやっていて、やはり海とか南の島には憧れがあって。いま流行りの〈癒し〉じゃないですけど、誰もが自分のライフスタイルのなかで、少しだけリアリティーのない世界を求めていると思うんですよ」

それは現実逃避ではない。東京という大都市にいながらにして、移動の快楽を味わう。時間を移動し、ジャンルを移動し、カテゴリーを移動する。それはまさにBEAMS RECORDSにおける共通のファクター──ちょっとした冒険心。

「画家のパウル・クレーの言葉に〈移動(旅)はアートをインスパイアする〉っていうのがあるんです。飛行機でも電車でもクルマでも、風とか光とか五感に触るものが変化していくことで、思考回路のなかの自分が忘れていた部分が転化(点火)していくような刺激を受けるんですよ」

なにげないデイリー・ライフからどこかへ旅立つための装置。BEAMS RECORDSの作品は機能的であり、かつイマジネイティヴである。

「いつも自分のなかで考えているのは、常になにかを提案したいという気持ち。いまスタンダードとされているものでも、発生した瞬間っていうのは決してそうではなくアヴァンギャルドだったり……時代を越えて残ったからこそスタンダードなんだと。僕たちの提案も時間の経過に色あせない〈本物〉であることを願っています」

愛情溢れるクラフトマンシップ、そして決して消費されることのない音楽と精神─ ─もしかして、〈音楽は文化の反映〉であることにいちばん自覚的なのがBEAMS RECORDSなのかもしれない。

「〈目利きのBEAMS〉で〈耳利きのBEAMS RECORDS〉だと言って欲しいですね(笑)」 

カテゴリ : フィーチャー

掲載: 2002年04月04日 05:00

更新: 2003年03月18日 20:50

ソース: 『bounce』 230号(2002/3/25)

文/駒井 憲嗣

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