OLD STYLE ROCK(2)
また、ゆらゆら帝国のように、バンド編成上では古典的なフォーマットを踏襲しつつ、微妙にずらした視点から生まれる独特の曲構成や、なにも語っていないようでいて、実は全てを語っているようでもある幼児性に回帰した詞世界は、ロックが持つプリミティヴな衝動を新しい形で提示している。あるいは、アルバム『ROCK'N'ROLL KINGDOM』において、ロックの衝動を原始時代にまで遡って求めたMAD 3のように、ロックの歴史を継承しつつ、そこに新解釈を含ませる……そんなバンドの例も枚挙にいとまがない。
さらに、洗練された音楽性を旨とするAORでは、多様化した状況下にあってもなお、高度なソングライティングやアレンジ・スキルが際立つ青山陽一の『Bugcity』やキリンジの『3』といった作品に進化の跡を見ることができるようにも思えるし、グループ形態がデュオの形を取っているとしても、 Port of Notesの作品を今日的なシンガー・ソングライター・アルバムとして聴くことも可能だ。
あるいは日本語詞によるロック表現の観点から見ても、日本語ロックについて、あるいは英語詞ロックについて、真面目に語られていた時代が遙か昔のように感じられるのも、いちいち例証するまでもなく、先達から受け継いだ表現を試行錯誤してきた結果であることは間違いない。その成果はファンクのリズムに違和感なく運ばれる独自の詞的表現を確立したスーパーバタードッグ、あるいは前後の意味性より、イメージの断片からなる表現に重きを置いた世界観を築くに至ったミッシェル・ガン・エレファントなど、今後のロックを考えるうえで大きな礎となるであろう作品も数多く生まれている。
しかし、こうした脈々と流れるロックの精神性やムード、パワーやエネルギーを受け継ぐにあたっては、当然、愛情を持った慎重な作業を要するし、安易な考えのもとでおこなわれた音楽の濁りや淀みを聴き手は決して見逃さない。また、<継承>という行為は前任者と後任者がいてこそ成り立つのであって、当然そこには世代交代も付随してくる。しかし、<喫茶ロック>シリーズのように、現役アーティストのコンピレーション『喫茶ロックnow』をリリースする一方で、先達の偉業を今日的な形に再編集して、リスペクトの念を表明する、そんな動きも見逃せない。
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