Rhymesterインタビュー ウワサの聖なる男気三角形(2)
ヒップホップって特別なものじゃない
──トラックの選択作業は、どんな感じで?
M 俺のトラックたち、JINのトラックたち、それと、主に宇多丸師匠が出すサブジェクトたちという3つの要素があるんですよ。それが出会った順からレコーディングしていく。
宇 ラップのテクニック的なアイデアがあったりとかね。“This Y'all, That Y'all”は、前からポッピンでやろうぜっていうのがあったり、ユニゾンていうアイデアは、JINにラップやらせるんだったら、これでユニゾンやろう、とか。イントロになんか必要だな、ってときにアカペラで掛け合って、ダブル・トラブルでやろうよ、とかね。
──エンターテイメントという部分には、みなさん意識がありますか?
宇 意識してるわけじゃないんです。3人で作ってるという磁場がそうなってるのかもしれないけど、結果的にエンターテイメント的なとこに着地するんですよね。それがRhymesterイズムなんだろうし。すごいバランスに気を遣ったりするから、この3人だと。結構、サブジェクトやトラックも含めて、エグい方向性みたいなのがあったとしても入り口を作ったり、リリック面でも完全にワケのわからないものにはしたくない。敷居は低くしておきたい。作ってる最中はあんまり意識してないけど。
M まやかしの小難しい芸術みたいな作品にはしたくない、ってのはあるね。自分らの作品に対して深みがないとは思わないし、逆に深いと思うから。それをそういうふうにして出したくないな、っていうのはある。
──敷居が低い、というのは感じますね。聴く層が広がると、本人たちの意識とは別のところで勝手にJ-Popという大きな括りに入るわけですよね。J-Popもエンターテイメントだし、そのなかでRhymesterは守るべきところを守りつつ、すべてのエンターテイメントに通じる部分を提示してると感じたんです。
M ずっとそういうスタンスでやってきてるつもりなんですけどね。まだラップも上手くなってきてるし、単純に音のクォリティーも上がってると思う。そういう次元に達してるから受け入れられてると思うんですけどね。
J リスナーがどう考えるかっていうのは、自分らでコントロールできない部分じゃないですか。自分らのできること、やりたいことをやっていくっていう基本スタンスで。
──聴き手の世代交代とかは考えますか?
宇 たとえば、ヒップホップは若い子向けの音楽だから幼稚な表現を使う、っていう必要はないと思うんです。十代の子が完全に理解するには難しいテーマも入ってたりするんだけど、それは後々理解すりゃいいんで。俺は逆に、下の子たちは背伸びしてでも聴くと思うし、大人が聴くに値するものになってればいいな、と思ってる。年齢限定で音楽作ってるわけじゃないし、別にヒップホップって特別なものじゃないから。