JAPANESE "NEO" GROOVE
デスクトップが生み出す音に、芳潤なグルーヴを嗅ぎとれる作品が続々と目の前に!
机を叩く音だったり、あるいはシンセサイザーのプリセット音源やアコギのカッティングだけで、どれだけ芳潤な音楽を構築できるか。ホーム・スタジオ(部屋)でアーティストが完パケまでこなしてしまう、そしてウェブ上で他人の日記を読むことが楽しみな日常となった現在。音楽に必要なのは、そんな人たちの体内に息づくいろんなグルーヴ感を如実に感じさせること、じゃないだろうか。ここに挙げたアーティストも、氾濫する情報に惑わされず、それを確かに実践している。そこにはもちろん〈リスナーが聴く〉という行為で初めて完成するような〈余白〉も設けられている。あとはそこに、僕たちがどんな色彩を塗りこむか、だ。
レイ・ハラカミ
『red curb』(Sublime)
物語は紡がれ、重ねられる。リリカルでメランコリックなメロディーとコード感で注目を浴びた、歌詞を持たない新たな意味での〈シンガー・ソングライター〉。大野松雄によるリミックス収録の『レッドカーブの思い出』も忘れられない。
ASA-CHANG&巡礼
『花』(Hot-Cha)
2001年前半に咲いた至宝。限りなくドラマチックな、あらかじめコントロールされた突然変異音楽。コンパクトなシステムとタブラを抱え、あぐらをかいて演奏するライヴもエキサイティングだった。蛍光色のイメージは今年を象徴する色彩感となった。
VARIOUS ARTISTS
『士魂2』(SHIBURAI)
主宰DJ BISHOPのほか、INDOPEPSYCHICS、白石隆之らのミニマルからアヴァンギャルドまで、振れ幅の広いビートは、フリー・ジャズの影響さえ感じさせる。サウンドだけに止まらないその総体的な活動は、さながらフルクサスのようだ。
リトル・クリーチャーズ
『FUTURE SHOCKING PINK』(chordiary/FAITH/東芝EMI)
生演奏によるオーソドックスな音色やフレージングを用い、巧みにエレクトロニカの文脈と融合を図る姿勢は、ある意味ニューウェイヴ的。三者三様のスタイルがスパークしたときの波動は筆舌に尽くし難い。
砂原良徳
『LOVEBEAT』(キューン)
混乱する世界の情勢の下で、憤りとともに心の底の静けさを誰よりも自覚し、真摯な姿勢で音楽に取り組んできた男。引き算の魅力が産んだ空間処理は、より大きな音楽の可能性へ向かう。カフェでこのアルバムが流れてきたときは嬉しかったな。
バードン木村
『OCEAN SURFER COOL DAD BUILDING SHOP SURFBOARDS』(Hot-Cha)
エキゾースト音も心地良く、チューンナップされたヴィンテージ機材とチャンス・オペレーションを駆使した、パードン先生の音楽講座。ジャニス、キャロル・キング、ウォーター・ボーイズというカヴァーの選曲も驚き。
RIOW ARAI
『Beat Bracelet』(SOUP-DISK)
(ブレイクビーツ〉という観点を字義通りに再確認させる。その精緻かつ骨太なビートはフロア・ライクであり、かつキーを叩く手先さえ見えるような不思議な親密さをもって迫る。ジャケットの円は自宅とストロボ・ライトを繋ぐサークルなのかも。
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