BEST JAPANESE STANDARD ARTIST
EDITOR'S TALK
多くのヴァリエーションのなかで確認した〈日本人のロック〉
ゆらゆら帝国
『ゆらゆら帝国III』(ミディ)
──これまたヴァリエーションに富んだラインナップだよね。そのなかからまたどうして、ゆらゆら帝国を?
ホント、音楽のタイプだけを抽出して分類していくと、いろんな括りができてしまう。あらゆる種類をフラットに並べたつもりではあるんだけど、そこで考えたのが〈J-Popのなかで、ロックってなによ?〉ってこと。で、この際、直球でいこうかなと。
──直球?
うん。枝葉のもとである幹の部分を探す作業。それは、単純にパワフルで、音楽知識を総動員しなくても楽しめる作品。邦楽ってことで、日本語も大事にしたかった。お子様でも口ずさめる日本人のロック……。
──それが、ゆらゆら帝国を選んだ理由だと。
うん。体温低そうなのもイマっぽいでしょ。
──ロックなのに低体温ってありなの? 肉体性を喚起してもらわないと、ロックって感じがしてこないんだけど。
それが彼らを選んだキモなの。オトナの余裕って言ってもいいんだけど、まわりを意識していないっていうかさ、自分の魅力を知ってる感じ? 過剰な気概が感じられないから、こちらも楽しめる。じっくり向き合える。
──確かに、ある程度のキャリアを積んだ中堅アーティストが良作をリリースしているね。
GREAT3やbloodthirsty butchers、LOW IQ 01 の作品からもそんな余裕が感じられた。ここまでの歩みは違っているけど、コーネリアスやBuffalo Daughterも懐の深い作品だったし。若いHERMANN.H & THE PACEMAKERSから、そんな余裕が感じられたのも印象的だった。
──でも、キッズたちの心を掴む音となると、このラインナップは変わってくるんじゃない? 〈Tシャツを着て、首にタオル巻いてる〉光景が、これらの音からはイメージできない。
いや、パンク/ハードコア系の音もたくさんリリースされていたけど、新しい動きがあまり感じられなかった。若い世代のモンゴル800やsmorgasはこの勢いのまま突き進んでもらうとして……。今後このカテゴリーは、バンドの年齢と音楽的なキャリアを、いかにして育んでいくか?が、課題になってくると思うんだ。その点でBRAHMANやCAPTAIN HEDGE HOG は、それをうまくクリアしていると思う。バンドの年齢と作品のクォリティーがうまく噛み合っている。
──でも、なにも考えずに突き進む美学。これまでの能書きすら、ブッ飛ばしてしまえるようなダイナミックなロックは、いつの時代も輝いているもんでしょ??
SADS、BBQ CHICKENS、モーサム・トーンベンダーは良かった。ここまで潔い姿勢は好感度大!! 震えたね。