BEST WORLD MUSIC ARTIST
EDITOR'S TALK
ワールドワイドな展開の一方で、純粋に個人の作品が問われた
MANU CHAO
『Proxima Estacion : Esperanza』(Virgin France)
――では、アメリカ外で。こちらもリイシュー・ラッシュだったよね。とくにブラジル! すごい枚数がリリースされてた。
そうだね。関係者のあいだでは<ブラジル・バブル>なんて呼んでたんだけどさ、夏にかけて1か月に10タイトル以上がリリースされてた。それが日本だけじゃなくて世界的な動きなの。だからトータルではものすごい枚数が出たことになるね。
――なにか考えられる要因なんてある?
日本だけなら、カフェ・ブームとかも絡んでそうだけど、世界規模になっちゃうとなー……アメリカ編でも言ったけど、ヒーリング・ミュージックみたいなものとして聴かれているのかも。とにかく完全にポップス化していた。
――ついでなんで、ブラジルを一気に行きましょうか。
まずはモレーノ+2でしょ!! あのカエターノ・ヴェローゾの息子ではあるんだけど、 Jr.評価ってことは抜きでスゴい作品を作り上げてきた。ダンス・ミュージックでもなくボサでもない。ちょうどいいバランス加減に、<これが最新ブラジル音楽のあるべき姿>だって思えた。マックス・ジ・カストロやオットーなんかと同様、2001年のブラジル音楽の新しい収穫だね。一時の新世代ブームが一段落して、彼らもアーティスト単位で作品が問われる時代になってきたんだ。
――さてさて、誌面も残り半分になってしまった。範囲が世界中なんで、ザックリとスピーディーにいきましょうか。
アフリカ――フェミ・クティは欧米のミュージシャンに接近。フランス――同じくシェブ・マミがナイル・ロジャースとニティン・ソーニーのプロデュースでライのアルバムを発表。ハワイ――小野リサのアルバム、青柳拓次が手掛けた企画盤が大ヒット。それと忘れてほしくないのが、マヌー・チャオ。彼がこれまでのキャリアを総括するようなスゴい作品をリリースしたことね。
――スゴい?? もともと彼はキューバとバスクの血が入ったフランス人なんだけど、いまはスペインに住んでる。このアルバムを聴き込んでいくと、いろんな国の匂いを感じることができるんだ。だけど結局は<マヌー・チャオのアルバム>としか言いようのない作品。<1+1+1+1+1=1>みたいな。
――……?? これこそ紙媒体の限界って感じ? 実際に聴いてみるしかないんだね。それでは最後に、ほかの地域をまとめてもらえるかな。
キューバとバルカン・ジプシーもブーム以降安定した動きを見せているし、それを考えれば世界の音楽がよりギンギンに身近になってきたんじゃないのかな。
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