BEST AMERICAN ROOTS ARTIST
EDITOR'S TALK
ブラック・ミュージックとベテランの再定義がおこなわれた1年
SOULIVE
『Doin' Something』(Blue Note)
――ワールド、ジャズ/ルーツってことになると、範囲はさらに広くなるよね? 2つに分ける線の引き方になにかいいアイデアはある?
アメリカとそれ以外ってどう? 上手くまとまる気がするんだ。
――では、アメリカ。ソウライヴが挙がってきてるけど。
以前はジャム・バンドなんて括り方をされてたけど、かなり変わってきてる。彼らのルーツには60年代後半のオルガン・ジャズやファンキー・ジャズがあるんだけど、2001年というタイミングで、それらの再評価と彼らのリリースがうまいこと重なった。彼らの音楽の奥行きを知る、いいキッカケになったんじゃないかな。
――彼らの〈奥行き〉っていうのを、さらに詳しく知りたいんだけど……。
これまでの焼き直しではなく、新しいセンスですべてをまとめ上げたところかな。ヒップホップやR&Bアーティストを巻き込んで、アルバム一枚でブラック・ミュージックの流れをまとめてみせた。フィラデルフィア・エクスペリメントなんかもそうだったね。
――それもこれも、過去の音楽が再評価されたことによって、より明確になったことだよね。ルーツがわかっていないと、その進化ぶりはわからないわけだし。
そうなんだ。アメリカはちょっとしたルーツ・ミュージック・ブームでホントにリイシューの多かった2001年でさ、映画のサントラもそうだけど、みんなが戦前のブルースやアコースティック・スウィングといった過去の作品を聴いて、あらためてベテランを評価しはじめたんだよね。
ジャズ・トランペッターでもありブルース・シンガーでもあるオル・ダラやブルースのバディー・ガイ、それにニューオーリンズのドクター・ジョンなんかがそうなんだけど、ベテランもこれまでのキャリアを省みず、すごく挑戦的な作品を続々と発表してきたという。
――ほかに大きな流れはあった?
うん。ジャズ・ヴォーカルとカントリーかな。ヴォーカルものは、フランク・シナトラなんかの黄金時代を彷彿とさせるしっかりとしたヴォーカル作品に人気が集まった。ダイアナ・クラールは長期間に渡って、チャートの上位に居続けたし、わが国日本でもakikoや小林桂が高い支持を得ていた。
――時代のムードなのかねぇ。なんか考えられる理由ってある? ゆったりとして落ち着いた音楽がヒーリング的に聴かれたのかも。あとはもちろん、この時代のムードとかね。
――リイシューの件といい、素敵なことだね。
まだまだ素敵な再発見はギンギンに続きそうだね。