NEW ELECTRONIC STRANGERS (その2)
PREFUSE73
『Vocal Studies Uprock Narretive』(Warp)
ヒップホップか否かということはさて置き、チョップした言葉がビートとせめぎ合い、溶け合う瞬間を楽しんでみる。反復するビートからヴォーカル表現を消去するのではなく、解放することから生まれる、その気持ち良さたるや!
THE AVALANCHES
『Since I Left You』(XL)
質感の異なる900以上のピースは、無限の組み合わせから正解を探す壮絶な作業と、あの妙なミキシングがあるからこそ、未体験のメロディーを奏でることができる。その意味で本作は、サンプリングが生み出した一級芸術品と言えまいか。
BJORK
『Vespertine』(One Little Indian/Polydor)
解放ではなく、内省に根ざした音色。それを正確にトレースするために招かれたジーナ・パーキンス、マトモス、オピエート、そして、ハーバート。彼らが発する明滅する電子音と無数のノイズは彼女の声と同居する瞬間、日常となる。
EARDRUM
『Side Effect』(Leaf)
エア・ギターならぬ耳ドラム。もしくは鼓膜を震わせるパーカッションの音圧と電子音によるアーバン・エクスペリメント。その壮絶な作風に突き動かされ、ビルの谷間ではラップトップ片手にバック・トゥ・プリミティヴな若者が増殖中とか。
RICHARD DEVINE
『Confield』(Aleamapper Schematic)
ついにその全貌を表したファースト・フル・アルバム。しかし、全貌とはいっても、この緻密かつ精巧なサウンド・デザインのすべてを把握することは不可能に近い。空間的な音の鳴りに耳を澄ませば、視覚さえ歪むような、新しい体験がここに。
FENNESZ
『Endless Summer』(Mego)
ウィーンから届けられた本作は、タイトルが示唆するように、心の中で移ろうことのない、ある熱い季節の空気感をそのまま封じ込めたような、そんな作風。相容れないはずのアコギと淡い電子音は、ここでは画筆と絵の具の関係そのもの。
APHEX TWIN
『Druqks』(London/Sir)
曲単位では、整然としたシステムが確認できるのに、それが全35曲となると混沌を帯びることへの戸惑い。しかし、それは彼がスウィングするムードをそのまま焼き付けているから。そして、それが彼の素顔であるからにほかならない。