FUTURISTIC SOUL CROSSOVER 過去と未来を行き交い、さまざまなジャンルを 各々の解釈でブレンドした豊潤な音楽たち
並べてみるとずいぶん大雑把なラインナップではあるが……。2000年に引き続いて豊作だったブロークン・ビーツ作品を筆頭に、クラブ・オリエンテッドな生音モノまで、ジャズ、ラテン、ソウル、ファンク、レゲエ、ヒップホップ、フォークなどなどのエッセンスをみずからの解釈でしっかりと形に仕上げた良作が多数リリースされた。陳腐化している〈フューチャリスティック〉や〈クロスオーヴァー〉という言葉も、ここに並ぶ面々に冠せられるのであれば、まあいいのではないかしら、と。とりわけ、スペイセクやゼロ7といった連中が生み出した異形の美しさに、個人的にはもっとも惹かれた。(出嶌)
SPACEK
『Curvatia』(Island)
シングルやリミックス仕事というごくわずかな露出のみで期待を集めていたスペイセクのファースト・アルバム。防音加工を施された部屋の中で鬱屈したソウルが美しくモーフィングを続ける、膜の向こうに人肌が感じられる先鋭。(出嶌)
MODAJI
『MODAJI』(Laws Of Motion)
〈西ロン〉ムーヴメントの旗手であるモダージが、ソウル好きの本領を発揮した本格的デビュー・アルバム。インスト曲のスタイリッシュなイメージから一歩踏み出して、ポップささえも感じられるヴォーカル曲の新鮮さもここでは光っている。(ネイシャン)
SYLK130
『Re-Member's Only』( Ovum/Six-Degrees)
キング・ブリットの、メイン・プロジェクトでの久々のアルバム。ソウルフルかつドラマティックなムードのトラックや、さまざまなジャンルから招かれた80'sテイストな豪華ゲスト陣に彩られ、華やかな作品となった。(ネイシャン)
NATHAN HAINES
『Sound Travels』(Chill Funk)
数々の西ロン系アーティストの作品で名バイ・プレイヤー的活躍をしてきたネイサンのソロ作。ファンクやソウル、ジャズなどへの愛情をストレートに表現したロマンティックなアルバム。プロデュースはフィル・アッシャー。(ネイシャン)
NEW SECTOR MOVEMENTS
『Downlord This』(Virgin)
いよいよ説明不要な存在になってきたブロークン・ビーツの旗手、IG・カルチャー。ヒップホップに始まったクロスオーヴァー・ソウル探求の旅の中で刻まれた足跡がここに集大成された感もある。仏を作って魂を込めた名作。(出嶌)
TRICKY
『Blowback』(Hollywood)
試行錯誤の期間を経て、灰の山の中から現れたのは、ガリガリに痩せたブルーズ。これまでのように神々しいまでの近寄りがたさはカケラもないけれど、聴き通すうちに煙に巻かれる感じは、やはりボーン・トリッピーなトリッキーならでは。(出嶌)
NITTIN SAWHENY
『Prophesy』(V2)
インテリジェントな作風で知られるUKエイジアン、ニティン・ソウニーの5枚目となるアルバム。ブラジルやスペイン、アルジェリアなど世界中から集められた音素材や社会的な歌詞など、知的好奇心をくすぐる要素も豊富な力作となった。(ネイシャン)
RES
『How I Do』(MCA)
七色のヴォーカルをモノトーン加工してダビーに敷き詰めたような、独特のサウンドが味わえるデビュー・アルバム。わかりやすく言えばトリップ・ホップなのだろうが、どこにも属さない唯一無二の佇まいが、強く心を惹いて離れない。永遠に未来的な一枚。(出嶌)
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