片寄明人(GREAT 3)が語るマルコス・ヴァーリの魅力
ついに念願叶ってマルコス・ヴァーリが60年代末から70年代にかけてオデオン/EMIブラジルに残したアルバムがCD化されましたね! これはまさに快挙と言える出来事でしょう。今回の再発は、夏の間レコーディングで滞在していたシカゴでも、リリース前なのに話題沸騰していました。みんなインターネットやらで情報仕入れているんですねえ。
日本から届いたばかりのマルコス・ヴァーリ & GREAT 3のスプリットCD(プロモーション・オンリー、GREAT 3の未CD化曲入り)を地元のCDショップに配ってプロモーションでもするか!と思い、まずは地元ミュージシャンの溜まり場ダスティー・グルーヴズ(元トータス、現プルマンのケン・ブラウンも働いています!)へ顔を出したところ、「ヘイ、もう50枚ずつオーダー済みだぜ! お前再発に関係あんの?」と言われる始末……。まったくもって素晴らしいことです!
思えば僕にマルコス・ヴァーリの音楽を教えてくれたのはハイラマズのショーン・オヘイガンでした。98年8月のとある暑い週末、彼が僕のFM番組に遊びに来てくれたときのことです。第一印象は〈ブライアン・ウィルソンとエンニオ・モリコーネによるボサノヴァ??〉。とにかく繊細なメロディーとバカラック級に洗練されつつも奇妙なコード進行とアレンジに一瞬で心を奪われました。そしてその当時すでに廃盤同然だったブラジル産の3枚組CDボックスをなんとか入手した僕は、そこに入っていた3枚のアルバム『Mustang Cor De Sa-ngue』『Garra』、そして『Previsao Do Tempo』を聴き狂い、彼の音世界に取り憑かれてしまったのでした。
どのアルバムもそれぞれ魅力があるのですが、個人的には『Previsao Do Tempo』というメランコリックでファンキーな73年のアルバムが大好きです。アジムスによる演奏が紡ぐ、30年近く昔に作られたなんて信じられない斬新な音響。エレピやアコギなどのアコースティック楽器に絡みつくアナログ・シンセサイザーのぶっとい音色と、セルジュ・ゲンスブール60年代末の作品を思い出させるミュートされたベースの乾いた音が創り出す音世界は、現在でも色褪せないどころか異様に未来的。トータスのジョン・マッケンタイアやステレオラブのティム・ゲインらがいまだに愛聴しているのも納得です。ぜひ彼らのファンの人も聴いてみたらイイと思いますよ!
今回のマルコス・ヴァーリ再発(全7タイトル)プロジェクトの監修者でもある片寄明人。GREAT 3はこの夏、シカゴにてジョン・マッケンタイアと次回作のレコーディングに入っていた模様。その作業もほぼ終了したようで、リリースが待ち遠しいところ。右は、今年の春にリリースされたGREAT 3の最新作『May and December』(東芝EMI)