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特集

〈ブラジリアン・グルーヴ・マスター〉の軌跡

カテゴリ : ピープルツリー

掲載: 2001年11月15日 06:00

更新: 2003年04月02日 14:46

ソース: 『bounce』 225号(2001/9/25)

文/若杉 実

残暑は厳しいが、ブラジル音楽への眼差しはもっと過熱している。渋谷・宇田川町界隈にでも繰り出そうものなら、そのことは簡単に実感できるだろう。オーバー・サイズのスポーツ・ウェアに身を固めた〈B〉なアニキがセルジオ・メンデスのバックに合わせて、デカイ身体をユッサユッサと揺らしている。ハデな姉ちゃんなんかいまにもサンバを踊りそうなノリじゃないか。渡辺貞夫のナビゲートによって60年代に日本に上陸したボサノヴァ。70年代、スピック&スパンを中心にフュージョンとの親和性をみせたサンバ。90年代初頭にはアシッド・ジャズの流れで急浮上したブラジル音楽。しかし、今日ほど広範囲の世代を虜にするブラジル・ブームは過去に例を見ないといっていい。

つまり、今なぜマルコス・ヴァーリなのかである以前に、なぜブラジル音楽なのか、ということなのだろう。個人的見解を先に片づけておくなら、これまで紹介されてきたブラジル音楽の〈陽〉にあたるサンバやボサノヴァからはするりと抜け落ちる、ロックやファンクといったポップス路線に世間の関心が向きはじめてきたということだ。ガレージやプログレの世界では、昔からブラジルに〈ネタ〉を求める傾向は水面下に著しかったが、90年代初頭のクラブ発ブラジル・ブームによって徐々に一般層へ拡がるきっかけが作られるようになった。なかには〈ブラジル産なら質は二の次〉といったきらいもあるように思えるが、往年のボサノヴァ・ファンはもちろん、ブラジリアン・シンガー・ソングライターといったものを探し求めているリスナーなどにも、マルコスのレコードが重宝がられていることは見逃せない事実だろう。これが、今日のマルコス再評価の懐深さといえるものだ。

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