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特集

とした歌声を残したシンガーソングライター(3)

カテゴリ : ピープルツリー

掲載: 2001年11月15日 15:00

更新: 2003年04月02日 14:44

ソース: 『bounce』 223号(2001/7/25)

文/桑原 シロー

残された天使の歌声

その後、彼女の音楽活動はゆったりとしたペースに貫かれていく。長い沈黙が続いたあと、モ-メンツのカヴァ-“Sexy Mama”からスタートする『Smile』(76年)が出る。ここからが〈母の時代〉の始まりだ。私生活の面でのトラブルやレコーディング作業のプレッシャーなどが彼女を第一線から遠ざけた理由であるが、ローラはかつてのような、激情を刻み付けるような音楽作りに疲れたのかも知れない。『Season Of Lights』(77年)、『Nested』(78年)『Mother's Spiritual』(84年)とアルバムは続くが、扱われる詩の内容やサウンドの表情も、より穏やかによりヒューマンにと、大きく変化していった。

90年代に入り、ゲイリー・カッツをプロデューサーに迎えた『Walk The Dog & Light The Light』(93年)が発表される。R&Bクラシックが多く収められたこのアルバムを携えて、94年には、72年以来の再来日公演が行なわれた。ふくよかな体を揺らせながら「ハーイ」と舞台に登場したローラを見てどよめきが起こったことが微笑ましく思い出される。彼女の柔らかな瞳が忘れられない、カステラのように甘い夜であった。わが友人は「彼女との距離が縮まった気がする」と漏らした。それから3年……そろそろ、歌声が聞こえてきてもいいんじゃないか、と思っていたところに突然の訃報。1997年4月8日、卵巣癌によりローラ・ニ-ロ、この世を去る。享年48歳。あっけにとられたままここ数年を過ごしていたが、先日入ったレコード店でローラの〈凛〉とした声が聞こえてきた。死の数年前に録音されていた『Angel In The Dark』が流れていたのである。そのとき店内のCD棚の上に蝋燭の炎がゆらゆらと揺れているのをはっきりとみた。このとき、ようやく彼女の死を捉えることができた自分に対し、〈なんてこったい〉と呟いた。

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