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特集

とした歌声を残したシンガーソングライター

カテゴリ : ピープルツリー

掲載: 2001年11月15日 15:00

更新: 2003年04月02日 14:44

ソース: 『bounce』 223号(2001/7/25)

文/桑原 シロー

とした歌声を残したシンガーソングライター

凛とした佇まい。ローラ・ニ-ロのあの歌声の印象を言い表わすとこうなる。凍てついたニューヨークの情感を歌ったときにも、目に眩しい自然の風景を歌ったときにも、絶えず根底には凛とした空気が流れており、声の温度は一定に保たれているのだ。ただし、クールという表現は適切ではない。どんなに怒りに揺れようが、絶望の淵に落とされてズブ濡れになろうが、彼女の肝の部分は常に引き締まっているということ。硬質な魂が歌を誘い出して中空に放り投げる。その奔放さが剥き出しになった作品ほど、男性のファンは深く動揺させられるわけで、『New York Tendaberry』というアルバムに淫する者たちの吐息が今夜も夜空に木霊している。そんな男たちのほとんどは、この作品に愛情と同時に畏怖の念を抱いてる。深いところまでいっしょに降りていこうとしたってローラの声はどこかで僕らを撥ね除けてしまうから。冷酷な仕打ちを受けてもなおしがみつこうとし、マゾヒスティックな悦びに震えている愚かな奴の姿を先日鏡の前で見かけたばかりだ。〈ぶっとびピクニックに出かけましょ〉と誘っておきながらいつも僕らをおいてけぼりにするローラ。そして彼女は本当にどこかへひとり行ってしまった。なんてこったい、畜生。

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