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往年の名ソプラノ、エルナ・ベルガー生誕120年記念特集(1900年10月19日 - 1990年6月14日)

カテゴリ : Classical

掲載: 2020年09月29日 00:00


ヘンデル:おお眠りよ、なぜお前は私の元を去るの?
エルナ・ベルガー(ソプラノ) ミヒャエル・ラウハイゼン(ピアノ)
1944年、ベルリンでの録音(BASFのLPより、現在は廃盤)

「彼女は隅から隅まで音楽そのものだ」フルトヴェングラー

往年のドイツの名ソプラノ、エルナ・ベルガー(Erna Berger, 1900年10月19日 - 1990年6月14日)が2020年10月19日に生誕120年を迎えました。今年は没後30年にもあたります。

可憐でいて母のように強くもある澄み切った美しい声。最高音でも柔らかく叙情的なレガートを維持することができる素晴らしい技巧を持ち合わせ、その歌唱は気品や知性を感じさせる、まさに理想的な名歌手でした。しかもオペラの舞台だけではなく、教会での宗教作品や、第九などのコンサートの作品、サロンや小規模な会場での歌曲でもそれぞれ最高の歌唱を示しました。

ベルガーは1900年10月19日、ドレスデン近郊の小さな村、コッセバウデで鉄道技師の娘として生まれました。幼い頃から歌が上手で、5歳のときにオペラ・アリアを立派に歌えるほどだったと言われています。父親がアフリカの鉄道建設のために家を空けたため、彼女はドレスデンの叔母達に預けられ、17歳のときには歌手への道が開けましたが、今度は父親について南米パラグアイに移住することになり、いったん歌手の道を断念します。パラグアイの生活に慣れた頃、父親が急死し、生活のため家庭教師として生計を立ててゆきます。余暇を利用して再び音楽を始め、23歳のときにはヨーロッパに戻るための貯金ができました。

ヨーロッパまでの長い船旅は3等船室でしたが、1等船室の音楽サロンでシューベルト、シューマン、ブラームスの歌曲を歌ったところ乗客たちから好評を得て、お金を出し合って1等船室に入れるようにしてくれました。これが彼女が歌で得た最初の謝礼でした。

ドレスデンに戻ってからは事務職で働きながら声楽のレッスンを続け、1925年にドレスデン歌劇場のソプラノ歌手として契約、モーツァルト「魔笛」の第1の童子としてデビューしました。その後も、先輩ソプラノが体調不良で降板すると、自ら名乗り出てチャンスを掴み、徐々に人気を高めてゆきます。ドレスデンの音楽監督フリッツ・ブッシュの推薦でザルツブルク音楽祭に出演し、成功を収めると、活動の場をベルリンに移し、市立劇場に出演。それを見ていた大指揮者フルトヴェングラーが1934年に彼女をベルリン国立歌劇場の歌手に任命。彼女はドイツ・オペラの最高の舞台で、《後宮からの逃走》《マルタ》《椿姫》《リゴレット》《ボエーム》《蝶々夫人》などで次々にヒロインを演じ、ドイツ屈指のソプラノ歌手としての名声を確立しました。

戦後はアメリカのメトロポリタン歌劇場に招かれ、1950年代の半ばまで第一線で活躍。アメリカ、オーストラリア、日本でリートを歌いながら大規模なコンサート・ツアーを行い、 "歌の大使"として知られるようになりました。

ソプラノ歌手は、旬の期間が短いものですが、彼女は1925年のデビューから1968年まで舞台で歌い続け、その後も機会があれば歌を披露しました。80歳の記念で歌ったシューベルト「夕映えの中に」の映像が残っていますが、美しく可憐で力強い歌声と気品に満ちた解釈はまったく変わらず、驚かされるばかりです。

1990年6月14日、ドイツのエッセンで心不全のため89歳で亡くなりました。彼女はウィーン中央墓地に葬られています。
(タワーレコード 商品本部 板倉重雄)

代表作ご紹介

リサイタル盤で味わうエルナ・ベルガー


ペルゴレージ:私の心は彼にあげてしまったのです
Provided to YouTube by NAXOS of America

上の試聴リンクは、ベルガーが61歳のときに録音したオルフェオ・レーベルのリサイタル盤からのものですが、年齢が信じられない美しく艶やかな歌声に驚かされるばかりです。声も技巧もまったく衰えが無く、内容表現だけが深まった素晴らしいリサイタル盤です。2枚目はナクソス・レーベルが彼女の代表的なオペラ・アリア録音を復刻したもので、彼女のオペラでの業績を1枚で知ることができます。


オペラ全曲で味わうエルナ・ベルガー


モーツァルト:歌劇「魔笛」~恐れおののかなくてよい、愛しいわが子よ(夜の女王のアリア)
Provided to YouTube by NAXOS of America

1組目は1937~38年のSP録音で、彼女の名を一躍世界的なものとしたビーチャム指揮の《魔笛》全曲です。当たり役の「夜の女王」での圧巻の歌声を楽しむことができます。2組目は1954年ライヴ録音のフルトヴェングラー指揮の《ドン・ジョヴァンニ》全曲。コケティッシュでしたたかな娘、ツェルリーナを可憐な歌声で演じています。3組目は1944年ライヴ録音のフロトウの《マルタ》。得意役のマルタを演じ、名曲「夏の名残のバラ」などで絶唱を聴かせています。最後は彼女が戦後、アメリカへ進出し、メトロポリタン歌劇場で大評判をとっていた1950年の録音。《リゴレット》のジルダを原語で見事に演じています。


コンサートでのエルナ・ベルガー


ベートーヴェン:交響曲第9番より終結部
フルトヴェングラー指揮ベルリンpo、エルナ・ベルガー(S)

1枚目はフルトヴェングラーのベートーヴェン交響曲第9番。1942年4月19日、有名なヒトラー生誕前夜祭でのライヴ録音です。上記映像は、この録音の時に撮られたニュース映像です。2組目は1946年にチェリビダッケ&ベルリン・フィルの演奏会に出演し、グリエール作曲コロラトゥーラ・ソプラノのための協奏曲 Op. 82を演じたときのライヴ録音です。組み物で、彼女が出演しているのはこの1曲だけですが、貴重な記録と言えます。