どこまでも歌い続けるブレイクビーツ……まるで優れたギタリストが鼻歌のように流麗なフレーズを紡ぎ上げるように、RIOW ARAIは、もはや音素として確認できる最小単位のサンプル素材を自由奔放に貼り合わせ、目の前に少し歪んだ風景を映し出す。それがコラージュ的な刺激でも、インプロヴィゼーションが持つ緊張感でもなく、純粋に音楽的に映る理由は、すべてRIOW ARAIという音楽家自身が、〈歌心〉を持っている人だから、と思う。だからこそ、これだけフロア対応の音楽でありながら、ビートのひとつひとつが有機的なメロディーとして響いてくるのだろう。本作では、そんな彼の個性が洗練ではなくより破天荒へと向かい、小難しさの欠片もないユーモラスなサウンドに仕上がっている。手法やジャンルから解き放たれれば、音楽はまだこれだけ自由になれるということを、本作は具体的に示している。
bounce (C)土井垣祥雄