パレットの絵の具のように明るく多彩な前作から一転、洒脱なグルーヴに黒さを滲ませた新作。特にプロデューサーであるconnieのクレジット曲にそのアプローチが顕著で、凄腕揃いのNEGiBANDが山下達郎バンドを彷彿とさせる"RELISH"、mabanua編曲/G.RINA作詞のほろ苦くもメロウな"Good Night ねぎスープ"、NEGiBANDのキューバ風味な演奏に、土岐麻子の詞とさかいゆうの曲が見事にマリアージュした"矛盾、はじめました。"など、惚れ惚れする良曲ばかり。大人びたサウンドはNegiccoの実直な歌唱に新たな表情を与えるだけでなく、近年のシティー・ポップ再評価の流れを一気に駆け抜けるような痛快さもある。他にも、Spangle call Lilli lineの提供曲らしいクールなリリシズムが新機軸の"江南宵唄"、堂島孝平とOKAMOTO'Sがタッグを組んだロックンロール"SNSをぶっとばせ"、坂本真綾が珍しく詞を提供した"私へ"など、どれも極めて高水準。間違いなく2016年のランドマークとなる一作だ。
bounce (C)鬼頭隆生