ドラティの十八番、絶対的名演「新世界」。同曲を多く残したドラティの至芸のひとつ。
同郷のハンガリーの作曲家達と同様にドラティが強く意識したのがドヴォルザークです。特にこの盤の「新世界」は1959年にコンセルトヘボウ管とPHILIPSレーベルに録音してから僅か7年後の録音であり(その後1977年1月にもVoxレーベルへ再録あり。RPO)、当時フェイズ4用の録音であったことを加味したとしてもレアなケースと言えるでしょう。
しかし驚くべきは解釈がまるで異なるということです。前回の録音はドライヴ力を駆使したユニークな演奏とも言える「新世界」であったのに対し、このニュー・フィルハーモニア管との演奏は自然な流れを重視するドラティらしい気風に満ちた上に、風格も十分備えた素晴らしい演奏。もちろんオーケストラとレーベルが異なるため音質的な違いも要素としては大きいですが、この盤は民族性を超えた純粋な名曲であることを強く意識させる演奏です。
カップリングには、珍しいオランダ放送フィルとのコダーイの組曲「ハーリ・ヤーノシュ」を組み合わせました。実はこの曲の録音は、この後1973年9月にもフィルハーモニア・フンガリカと録音をしています(同じくDECCAへ、コダーイ録音集の一環として)。オケは違えども、僅か3か月後に全く同じ曲を同じレーベルに録音するというのは非常に珍しいことであり、他の指揮者ではライヴもの以外ではほとんど無いケースでしょう。ドラティはコダーイの管弦楽録音をまとめて録音する機会として「ハーリ・ヤーノシュ」だけ省く訳には行かなかったと思われますが、かなり珍しいと言えます。逆に言えばこの音源はメインのアルバム群からは外れていることもあり、これまであまり注目されて来なかったかも知れません。その意味でも興味深い音源です。

タワーレコード （2014/03/19）