前作『リトル・ジャーニー』から4年、鬼武みゆきのサード・アルバム。11年目を迎えた自身のトリオ[グレッグ・リー(B)、ヤヒロトモヒロ(per)]のグルーブ感も更にバージョンアップ。心地良いリズム、美しいメロディー、肩肘を張らず触れてほしい彼女のジャズはまさにクール＆ビューティー。前作以降、オーケストラのアレンジ(演奏：マレーシア・ナショナル・シンフォニー・オーケストラ)や、映画の挿入曲(小栗康平監督「埋もれ木」)を作るなど様々な経験により、作曲のみならずアレンジにも新境地が伺える。聴く人の心に様々な思いを巡らせる。近年は鈴木重子との共演、amin、ウェイ・ウェイ・ウー、桑江知子、NUUらのライブサポート、手嶌葵のレコーディングなど作曲・編曲・演奏で高い評価を得ている鬼武みゆき。本作は、「自然」と「人」をモチーフに、彼女が日頃「見た」こと「思った」こと「感じた」ことを素直に曲で表した、すべてオリジナルによる全9曲。コンポーザーとしての魅力を十分に発揮した作品となっているが、これまでのアルバムとは少し趣が異なる仕上がりになっている。それは、今回レコーディングでは初めて使用したピアノ“ベーゼンドルファー・インペリアル”の響きもあるが、何より前作からこの4年間で彼女のアレンジに磨きがかかった事によるところが大きい。彼女が何を“感じていた”のか想像しながら聴き比べるのも楽しいでしょう。エンジニアにはデビューから引き続き巨匠・森本八十雄。マスタリングに小泉由香。信頼に支えられた者達のコラボレーションが生み出す贅沢な一枚。

タワーレコード （2009/04/08）