カスタマーズボイス一覧

Geography / Tom Misch

オープニングトラックの 「Before Paris」 から掴まれる。

マッシヴなドラムにグルーヴィーなギターのアンサンブルが自然と体を揺らし、そこから拡がる電子の音の波に感覚が誘われる。

体や周りの空気が、まるでもともと液体であったかのような感覚になり、チルといった言葉だけでは形容しきれない気持ち良さがある。

リズミカルでアップテンポな曲からムーディな曲まで振れ幅があるが、その継ぎ目を感じさせないほどトラックの繋がりが有機的で、それはまるで地面の中で様々な方向に根を張った木々が、エネルギーの循環の中に身を置き、枝葉を伸ばし呼吸している営みそのもののようである。

購入したのはEU盤だが、音がシンプルに良く、音楽を聴く時間というものの暖かみを感じさせる。

レコードとしての質が高いと思う。

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クロちゃんさんが書いたカスタマーズボイス

  • 1

(全5件)

ワンピースを着て乗馬にチャレンジする坊主頭の男性。「Kno Me」のPVの一幕、それがジェリーペーパーを初めて目にした瞬間である。
初めて目にした時は奇妙な出で立ちのように思えたが、
クネクネと身をよじらせながらもバンドとして鳴らしている音楽がかっこいい。

今作は彼がノンバイナリーを公表して初めての作品になるという。
アーティスト自身のパーソナリティに関する日々の苦悩は当事者以外には細いところまでは想像の及ばない領域だと思うが、彼はノンバイナリーであることを公表しそれを世界と共有したことで「自分自身を深く知るための方法になった」と語っている。他者から見られているという過剰な意識から解放され、より自分自身のことを包括的に理解することができたのだと。

音楽に限らず創作活動とは、その人自身やその人を取り巻く環境、世界の一つの表れでもあると思うし、その意味で彼の音楽的趣向や人間的な指向の多様さがこのアルバムにも素直に現れているのだろうと感じた。

シンセサイザーの奇妙な音と、彼の喉から絞りだされたダウナーな雰囲気をまとった声の重なりが、懐かしさと同時に、この世界の物理的な重量から解放されたかのような精神世界を思わせる。
楽しげでありながらもどこか愁いを帯びた彼の声と軽妙なメロディーの相互関係は、ある種のギャップを生んでいる。
それは、ポップでありながらも軽やかさだけではない、彼独自の人間性からにじみ出る、創作や人生における態度の表れのようにも思える。

ちなみにこの作品は通常のブラックヴァイナルとカラーヴァイナルの2パターンがあり、自分はカラーヴァイナルを買った。
ネット上には「カラーヴァイナルはブラックヴァイナルに比べて音質が劣る」という意見も散見されるが、この作品において特にカラーヴァイナルだから音が悪いと感じたことはなかった。ブラックを聞いていないので、比較はできないが。
他のアーティストのアナログ盤と比較しても音質的に劣っているとは感じない。
アルバムジャケットに配された「ワンピースの黄色」「チェーンソーの赤」「砂時計の青」という象徴的な三色と同じ色でアナログ盤も配色されており、ターンテーブルの上を回っている様は爽やかな趣があって、魅力的だ。
アートワークの細かいところにまで趣向を凝らした作品。

one

Honzi

5:

★★★★★

ヴァイオリニストでありキーボーディストでもあるHONZIのファーストアルバム。

もともと流通量が少ないのか、CDを入手するのが難しく、昨年やっとサブスクでリリースされた本作。今回新たにアナログ盤で発売されることを知り購入した。

フィッシュマンズのサポートメンバーとしても広く知られる彼女は、キーボードやヴァイオリン、パーカッションなど実に多くの面でバンドの音を支えた。また90年代後期は曲の編成に関わる部分に参加したり、よりバンドの中心に近い存在になっていった。

本作はそんな彼女のファーストアルバムであるが、フィッシュマンズのライブで見せるコミカルで情熱的、そしてクールな一面とはまた違い、この作品ではひとりの音楽家としての表情を見せている。

プチンと小さな空気の泡がはじけるような音と何かの信号音のような音のリフレインから始まる「BIRTH」はSF的な原始の風景と郷愁的な風景のどちらをも思わせ、つぶやくように歌うhonziの声とノスタルジックな音色の数々が現実に流れる時間とはまた違った速度で流れる時間や空間の存在を感じさせる。

3曲目の「GATERA-GATA」は鍵盤とギターのフレーズが重厚で、そこに打楽器やHONZIのバイオリンが折り重なっていく。(90年代後期フィッシュマンズの音楽性に通ずるものを感じさせる)

4.蘇州夜曲はHONZIの歌声もさることながら、バンドの演奏がとても良く、ライブで聴いてみたかった。

B面の「TAKE A TRIP」はHIPHOPを思わせるリズムの中に管楽器の情動的なプレイがコラボレーションし、これもまたすごくカッコイイ。

アルバムジャケットや歌詞カードのアートワークはどこかあべこべで、コラージュ的な違和感/面白さを感じさせ、またこれが現実を一つ飛びさせるようなアルバム全体を通しての空気感をよく表している。

また、様々な時空を自由に行き来するようなHONZIの音の世界観、音像を、全体を通してクリアな響きで実現してくれているプロデューサー、ZAK氏のマスタリングがとても素晴らしいと思った。

このような素晴らしい音楽を今の時代にアナログの音で聴くことができるのを幸せに思う。

HONZI氏はもちろん、アナログ化を企画した人、そこに携わった人々に感謝したい。

オープニングトラックの 「Before Paris」 から掴まれる。

マッシヴなドラムにグルーヴィーなギターのアンサンブルが自然と体を揺らし、そこから拡がる電子の音の波に感覚が誘われる。

体や周りの空気が、まるでもともと液体であったかのような感覚になり、チルといった言葉だけでは形容しきれない気持ち良さがある。

リズミカルでアップテンポな曲からムーディな曲まで振れ幅があるが、その継ぎ目を感じさせないほどトラックの繋がりが有機的で、それはまるで地面の中で様々な方向に根を張った木々が、エネルギーの循環の中に身を置き、枝葉を伸ばし呼吸している営みそのもののようである。

購入したのはEU盤だが、音がシンプルに良く、音楽を聴く時間というものの暖かみを感じさせる。

レコードとしての質が高いと思う。

すでにCDで発売されている同タイトルのアナログリリース盤。
CDに収録されていた内容を見直し、新たに加えられた曲目や逆にカットされたトラックもある。

1.Oh!Crime[DUB]からCD盤のそれとは全く異なるアレンジで、すでに既出盤と趣きが大きく違う。
さらに2.土曜日の夜[DUB]も新たに収録されたテイクであり、こちらは佐藤伸治の歌唱は控えめに抑えられており、インストゥルメンタルのようなアレンジになっている。

フィッシュマンズはデモテープから、ライブまでどんな環境、編成でも同じクオリティのものはない。
その時のメンバー構成や気分がより求めるものを音にしている印象があり、そのためいつ聴いても新しい発見がある。

この再編集されたライブ盤でさえ、CDで作った印象を再度解体し、一つのまとまった作品として練り直された感がある。
アナログ盤になって、より低音(主に柏原譲のベース音)が地面を伝って腹の底までよじ昇ってくるようなうねりを伴って響いてくる。フィッシュマンズの中でもよりレゲエ色、DUB色が強く濃密な作品になっていると個人的に感じた。
180gの重量盤ということもあり音がしっかりしていて、SIDE:D「チャンス」の佐藤のコルネットが伸びやかで気持ち良い。

全体を通して、とても良い作品だと思う。

Stones Throwからデビューしたsilas short。どこか空気中を漂うかのような浮遊感のあるメロディーが心地よく特徴的。
デジタル音源ではよりクリアーな音だが、アナログ盤は低音がより存在感を増して、水中で歌っているかのような印象を受ける。
タワレコに電話して在庫を尋ねたものの「現在売り切れで再入荷の予定はない」とのことで海外の通販サイトでチェコでプレスされたものを買ったが、A面は細かい傷が入っており、プツプツ音が多かった。
その後すぐにタワレコで当該商品が再入荷されたので、あのやり取りはなんだったのかと残念な気持ちになった。
電話口であれ、ちゃんとした情報が欲しい。

話を戻すと、表題曲にもなっているB面の「Drawing」は特にアルバムの中でも完成度が高いと思った。伸びのいいファルセットの重なりが心地良い。
思考の中を泳いでいるような内省的な歌声(とは言っても深刻ではない)や歌唱法はどこかRadioheadなどの影響も感じさせるが、silas shortの歌声やメロディーが醸し出す世界観はより軽やかで力みがない。(「ROOMS」のPVでもradioheadのTシャツを着ている。)

アルバムの発表が楽しみなアーティストの一人。

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