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カテゴリ : cinema 

掲載: 2009年08月31日 14:26

更新: 2009年08月31日 14:26

文/  intoxicate

intoxicate6/20発行vol.80にて、樋口泰人さんにご紹介いただきました映画『クリーン』が8月29日より公開されました!
8/30(日)に開催された樋口さんと映画評論家の大森さわこさんのトークショーのオフィシャルイベントレポートです。ほんと、良い作品です!!



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「必死な姿が心に響く」
樋口泰人×大森さわこ『クリーン』公開記念トークショー



カンヌ2冠を達成した話題作『クリーン』の公開を記念して、30日、シアター・イメージフォーラム(渋谷)では、『クリーン』公開の切っ掛けともなった爆音映画祭を企画し、映画評論家として活躍する樋口泰人さんと、同じく映画評論家で喪失と再生をテーマにした書籍「ロスト・シネマ」の著者でもある大森さわこさんを迎えてトークショーが行われた。『クリーン』は夫を亡くした母(マギー・チャン)が、離ればなれに暮らす幼い息子との絆を取り戻すため、夢と現実に引き裂かれながらも人生をやり直そうと誓う再生の物語。



樋口:『クリーン』は何度か観ているんですが、最初に観たときと印象が変わってきているんです。この映画の中にはいいことも悪いこともたくさん描かれていているけれども、主人公がそれを一度「受け入れる」ということ。最近はそこがいいと思っています。今日は大森さんにいいと思ったシーンはどこだったか聞きたかったんです
よ。ちなみに僕はイレーヌ(ジャンヌ・バリバール)が会社の女の子をトイレに監禁したことをエミリー(マギー・チャン)に話すところ。果たして笑っていいのか…。こういうのも含めて色んな要素を入れているところが、監督らしいなと思いました。



大森:なるほど、一見シンプルなストーリーだけどいろんなことが描かれていますよね。私が好きなのは王道だけれど、最初はどうしようもない感じのエミリーが、夫を失い、子供とも離ればなれになり、そしてついに再会する、という場面のマギーの表情。嬉しいけれど、まだどこか不安げな顔、あの顔がとても印象に残っていて、好きですね。



樋口:複数のことがひとつの演技に同時に存在している、という意味でそれも同じなのかもしれません。



大森:正直、お義母さんの気持ちもわかるなぁという、感じでしたね。でもだんだん母親としての気持ちと自分の夢とを必死に生きているエミリーの姿が心に響いてくるんです。最終的には感動してまいましたね。



樋口:映画って誰の視点で見るかで違ってきますよね。僕なんかは映画そのものをニック・ノルティの視点で観ていました。



大森:マギーはカンヌ女優賞を取っていて実力ある女優さんですし、『花様年華』とはまた違ったキャラクターを見事に演じていましたね。意外なサプライズがそのニック・ノルティ。ハリウッド、アクション映画の印象が強かったですが、この映画では彼が出てくるだけで癒されるというか…。こういう人がいたら、「もうダメだ」と思っても本当にもう一回やりなおせるんじゃないかなと思いましたね。



樋口:監督はニック・ノルティのアメリカ映画を観て、何か彼の可能性を引き出そうとして起用したのかもしれません。この映画を観ることによってアメリカ映画を観ることの楽しみが増えるかも。あと、ブライアン・イーノの音楽がとてもいいので、高い音と低い音のレンジの幅を感じてみてください。



(最後に一言、と司会者に言われ)



樋口:この映画に感動した人は、是非他の方にも…



大森:よかった方拍手!



(会場に大きな拍手)



樋口:今拍手した方は20人連れてきてくださいね(笑)



映画の魅力が詰まった熱気溢れるトークショーとなった。シアター・イメージフォーラムでは、毎週水曜日、男女問わず2名で入場料が2000円となる「大切な人と一緒に映画を観ようキャンペーン」を実施する。この機会に、大切な家族や恋人についてもう一度思いを巡らせてみてはいかがだろう。



『クリーン』 公式ホームページ
http://www.clean-movie.net/



8月29日によりイメージ・フォーラム他全国順次公開



監督・脚本:オリヴィエ・アサイヤス「夏時間の庭」
撮影:エリック・ゴーティエ「イントゥ・ザ・ワイルド」/製作:ニヴ・フィッチマン「シルク」/音楽:ブライアン・イーノ 
出演:マギー・チャン「花様年華」「HERO」/ニック・ノルティ「ホテル・ルワンダ」/ベアトリス・ダル「ベティ・ブルー」/ジャンヌ・バリバール「ランジェ公爵夫人」
(2004/フランス・イギリス・カナダ/114分/カラー/35mm/シネマスコープ/ドルビー
SRD/日本語字幕:寺尾次郎)