
サディスティックな〈姉さん女房〉が出すお題を元に、残る4人がぶっつけで MONOBRIGHT流のカヴァー曲を提案する短期集中連載。その音楽バカぶり丸出しの会話は今月も継続中! 第3回目のテーマは、メンバーが現在、明け暮れまくっているアレでございます!!
今月のお題〈ライヴ〉
ヒダカ「〈サディスティック・ダカ・バンド〉へようこそ~。サディスティックにいきますよ、今回も。〈淫ビテーション・ツアー〉の追加公演目前ということで、今回のお題は〈ライヴ〉。ライヴ盤って、みんな1枚は持ってると思うんだよね。タッキーはどう?」
瀧谷「JUDY AND MARYの」
ヒダカ「後期?」
瀧谷「……」
松下「後期だと思います。超ラスト。休止前の、東京ドームと恵比寿ガーデンホールのライヴ音源(99年の『44982 VS 1650』)……っていうか、タッキーが喋れよ! 俺が説明してどうすんだよ!」
ヒダカ「ジュディマリのライヴ盤の魅力はどういうところ?」
瀧谷「CDと違うところがいい」
ヒダカ「まず、ライヴ用のアレンジになってるっていうね」
瀧谷「あと、演奏はバラバラなんですけど、でもひとつっていうか、塊としてすごい勢いがあるところが好きですね」
ヒダカ「じゃあ松下さんは、ライヴ盤と言えば?」
松下「やっぱり、ゆらゆら帝国ですかね。ライヴ盤としても出てるんですけど、僕が好きなのはライヴで収録した音源をスタジオでミックスし直したっていう」
ヒダカ「ジョー・ジャクソン方式ですね」
松下「ライヴ・リミックスじゃないですけど、聴いたらすごいアーティスティックだったんですよね。その時のツアーも、その作品を作ることが前提にあるみたいな感じで」
ヒダカ「21世紀ならではというか、プロ・トゥールス以降の実験だよね」
松下「そういうのが感じられて。ライヴも3人でやってるとは思えないほどの再現度で、なるほどのアレンジで。伝えるセンスがハンパない。全員何をやっているかわかるし、かといって薄くはないっていう不思議な感覚で、僕のなかではカリスマですね」
ヒダカ「意外なライヴ盤が出ました。出口さんは?」
出口「自分のなかで思い入れのあるライヴ盤って考えた時にいちばん最初に出てくるのがチープ・トリックなんですよね。武道館でやったやつ。冷静に聴くと、歓声のほうがものすごくデカいんですよ」
ヒダカ「そうだね。ミックス、酷いっちゃあ酷いよね(笑)」
出口「でも聴いた時に、その場の熱気とか空気感をすごく想像できたというか。〈自分が行った気になれた〉っていうのが、田舎の中学生にとっては衝撃的だったっていうのがあって。間違っていようが演奏があまり聴こえなかろうが、ライヴってこういうものなんだ、っていうことを教えてもらった気はしますね」
ヒダカ「桃野さんは?」
桃野「僕、2つあるんですよ。タイムリーに好きだったのは、ニルヴァーナの『From The Muddy Banks Of The Wishkah』で。まあ悪い影響なんですけど、ヘタでもプロになれるんだっていう(笑)」
ヒダカ「(笑)演奏は粗いからね」
桃野「そうなんです。それで、やる気が俄然出て(笑)。でもライヴ盤としていちばん好きなのは、ボブ・マーリーの『Live!』っていうアルバム。一体感がハンパじゃなくて。あのタイトさはなんなんだろうって」
ヒダカ「どこまで決めて演奏してるかわかんないよね。すごいアドリブっぽいんだよね、全体が」
桃野「なんですけど、タイトだし、ガッチリ合ってるし。それまでレゲエはルーズなものだって思ってたんですけど、それも覆されたし。もう度肝を抜かれて。音が持つエネルギーが挑戦的っていうか、パンクなんですよね。僕が思い描いてるパンクって、これだなって。バンドマンは一家に1枚持っててほしいくらい」
ヒダカ「じゃあ最後はトオルちゃんおススメのライヴ盤だけど、デヴィット・ボウイの『Live Santa Monica '72』。〈ジギー・スターダスト・ツアー〉の時のですね。ボウイは『Let's Dance』前後の煌びやかなあたりがリアルタイムで、そこから遡って聴くようになって。〈ジギー〉すごいな、よく構築されたアルバムだな、と思ってライヴ盤を聴いたら、ピアノとアコギだけで昔のブレヒトとか1920年代ぐらいの舞台音楽みたいな古い歌をカヴァーしたりしてて、スタジオ盤と全然違うんだよね。歌もフェイクでガンガン崩しちゃうんだけど、全盛期だから声もすごい高音まで出てるし、いまみたいにキー下げて歌ってないし。実はすごいロックンローラーだったんだなって、見直したっていう。偉そうだけど(笑)。ああいう〈スタンダードをライヴで歌う〉っていう習慣は、ボウイから教わった。いい意味でのパブロック感みたいなのがあるじゃん。お客との距離感とか親密さみたいなものの、いい指標になったっていうか。例えば、スタジアムぐらいのスケールで突き放したようなパフォーマンスやってても、誰もが知ってる懐かしの曲がスッと入るだけで、ライヴの見え方が全然違うっていう。そうやってお客さんを掴んでいくんだなって。だからライヴ盤にはいろいろ勉強できることが詰まっていると」
桃野「ライヴ盤、これはガンガン聴いたほうがいいですね」
ヒダカ「で、いろいろ出てきましたが、どれか一個カヴァーするなら?」
松下「ニルヴァーナとかいいんじゃないですか?」
ヒダカ「でも5人もいらない。3人でいい。俺と桃野さんいらない」
松下「ニルヴァーナなのにハンドマイク(笑)」
桃野「それ、いちばん格好悪い(笑)」
ヒダカ「格好悪いね(笑)。あとボブ・マーリー的なアドリブかどうかわかんない長尺な曲は、1回ライヴでやってみたい気はするね。ゆら帝っぽく、あとからミックスし直してライヴ盤にする、みたいなのはバンドの実験としてすごい楽しそう。ライヴの楽しさとレコーディングの楽しさと両方楽しめる」
桃野「それいいかも。じゃあ、ボブ・マーリーいっちゃいましょうか」
PROFILE/MONOBRIGHT
2006年、桃野陽介(ヴォーカル/ギター/キーボード)、松下省伍(ギター)、出口博之(ベース)、瀧谷翼(ドラムス)の4人で結成し、2007 年にメジャー・デビュー。2010年2月、突如〈2011年の春までに4枚目のアルバムをリリースする〉と宣言し、10項目を掲げた〈DO10!!〉プロ ジェクトを開始。3枚のシングルに続いてサード・アルバム『ADVENTURE』を発表し、直後の11月には元BEAT CRUSADERSのヒダカトオル(ヴォーカル/ギター/キーボード)が新メンバーとして電撃加入! さらには今年1月に5人組バンドとしての初音源『淫ビテー ション e.p.』を、3月にトリプル・タイアップ付きの両A面シングル『COME TOGETHER/DANCING BABE』を送り出し、いよいよ5月11には4枚目のアルバム『ACME』(DefSTAR)をリリース! そんな怒涛すぎる彼らのスケジュールは、オフィシャルサイトでご確認ください!!