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METALLICA @ さいたまスーパーアリーナ 2010年9月25日(土)

連載
ライヴ&イベントレポ
公開
2010/10/01   21:01
更新
2010/10/01   21:26
テキスト
文/加藤直子

 

 

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Photo by William Hames

 

誰かのライヴへ行くのに、こんなにワクワクして足元がフワフワしたような感じになるのはいつ以来でしょう? 当日を遡ること約2週間前から、わが家ではメタリカ以外聴かなかったうえ、最新のライヴDVDをできる限り観まくるだけでなく、彼らが来日前に訪れていたオーストラリア公演の音源をダウンロードする(メタリカはオフィシャルサイトですべてのライヴ音源をダウンロードさせてくれるという非常にファン思いのバンドです。かなりマニアックなトリヴィア付き)など健気で一途なところを見せ、イメージトレーニングも万端で臨んだわけです。

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Photo by William Hames

今回は2008年発表の最新作『Death Magnetic』を引っ提げて行われているツアーの167回目のショウとなる日本公演の初日を拝見。4年ぶりの来日となりましたが、〈サマソニ〉に出演した前回は3作目『Master Of Puppets』の完全再現を含む!というスペシャルすぎるセットリスト(ワンマンではなくフェスの現場でこれをやるというのは、いま考えると結構横暴)だったため、いわゆる普通の(?)ステージは2003年以来。やはり年齢層が若干アダルトな会場内はメタリカTシャツを着ていないとアウェイな気すらするほどで、大人たちが〈1曲目当てごっこ〉などをしたり、スタンドの人はソワソワして立ったり座ったりしていたりと、スタート直前は何だか落ち着かない異様な熱気に包まれていました。

そしてとうとう会場が暗転すると、お馴染みの“Ecstacy Of Gold”が流れはじめ、ステージ上のスクリーンには映画「続・夕陽のガンマン」のシーンが映されます。画面のなかのトゥーコと同様に墓場を激走したくなるような、グワーッとアドレナリンがラッシュする感覚はわかっちゃいるけどたまりません! そんなこんなでラーズ・ウルリッヒ(ドラムス)が後ろから威勢良く飛び出し、他3名も脇からワラワラと登場。この流れで行くとやはり1曲目は“Creeping Death”でしょう! 始まりはクリデス希望派なのでかなりウレシイ! このレポを書くためにちゃんと観ていないといけなかったのですが、自分が夢中で〈Die! Die!〉していたことだけは覚えているものの、後はあまり記憶にありません。申し訳ありません。

さて、ジェイムズ・ヘットフィールド(ヴォーカル/ギター)が相変わらずのエエ声で〈メタリカ・イズ・バック!〉と叫ぶと、ライヴでこそ真価が発揮されるエモーショナルなロバート・トゥルージロ(ベース、Q太郎似)によるイントロに泣かされた“For Whom The Bell Tolls”、ステージ上で本日一発目のファイヤーが飛び出した“Fuel”を連発。この時点でかなり気温(室温)が上がっております。

 

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Photo by William Hames

 

ところで、世界一目が離せない&顔(表情)で七難隠すドラマーのラーズですが、やはり彼の動きと顔はステージ上の誰よりも観客の盛り上がりを左右していました。今回も“Harvest Of Sorrow”のブレイク時にシンバルを立ち上がって止める時の必死な動きと顔、“The Day That Never Comes”のラストで他3人が弾き出すスリリングなアンサンブルがかなり手に汗握る状況のなか、その後ろでどんどんスゴイことになっていく顔など、暴走気味なドラミングも何のその、その顔さえあればすべてが上手くいく最強ぶりはもはや神の領域です。このバンドは彼なくしては成立しないと改めて実感してしまいました。

 

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Photo by William Hames

 

一方、ぽっこりおなかもステキなジェイムズは、中盤に差し掛かったあたりで何やら手元でゴソゴソやっていると思ったら、ピックを2つ、キバ風に口へくわえる――基本的に男汁満載の彼ですがなかなかチャーミングな人で、ライヴ中はちょいちょいカワイイことをしていたものです。またMCでは共にツアーを回っている前座のスウォードとフィア・ファクトリーに敬意を払ったり、〈良い時も悪い時もメタリカはキミたちの心にいつもいるぜ!〉と言ってみたりといちいちハートフルで泣けるのですが、やっぱり曲になると鬼! あちこちで高速モッシュが起こった“Master Of Puppets”では彼の代名詞である超速ダウンピッキングをキバりながら披露し、続く“Blackened”の冒頭のリフはク~ッと痺れる格好良さ。リード・ギターはちゃんといるけど……ゴメンナサイ!

 

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Photo by William Hames

 

でも、気合いの入ったアイメイクがバッチリだったリード・ギタリスト=カーク・ハメットのプレイもなかなかの安心感がありました。超絶的だけど決して超絶ではない、でもソロなどで聴かせる優しさたっぷりのプレイはメタリカの特徴である哀愁パートを支える重要な存在なのです。

 

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Photo by William Hames

 

また、すっかり存在が馴染んだ加入7年目のロバートは、異常に重心が低くて相当疲れるであろう体勢も定着。盛り上がれば盛り上がるほど重心は低くなっていくようで、“Master Of Puppets”ではジェイムズといっしょにとうとう座ってしまったりも! 前回“Orion”を弾き切った時は震えたものですが、もうちょっと見せ場をあげても良いかもな……なんて。

 

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Photo by William Hames

 

“That Was Just Your Life”“The End Of The Line”と最新作からの楽曲も披露しながら(“All Nightmare Long”はどうした!)、この日は王道だなと思うセットリストであっという間に終盤戦。カークの泣きソロを挿み、“Nothing Else Matters”~“Enter Sandman”で本編のラスト迎えました。しかし、もちろんまだ終わらない。アンコール冒頭のお馴染みのカヴァーのコーナーは、ジェイムズいわく〈俺たちに楽器を持つ気にさせ、音楽を始めさせてくれたバンドだよ〉というダイアモンド・ヘッド“Am I Evil”を披露。そしてラストは〈エナジーを残すな〉とおっしゃるジェイムズ様の指示により客電が点けられて“Seek And Destroy”がスタート。次はいつ観られるかわからないという焦燥感から、広いステージを右へ左へと動く前3人、そしてやはり尋常ならざる形相のラーズを凝視。すごく楽しいんだけど、何とも言えない寂しさも同時にこみ上げてきて……うぅ。

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Photo by William Hames

そんなこんなで最後まで盛り上がっておきながら、終わって思ったことは〈イメトレしすぎた〉。完全に自分のせいです。演る曲/曲順は毎回違うとはいえ〈お約束〉が盛りだくさんで、すでに知っていることが多すぎました。が、それも期待していた約束であったことは間違いなく、これまでになくいまのバンドの充実ぶりが窺える内容で最高に興奮させてくれたし、いい夢を見せてもらいました。ダイナミックにセットリストが変わるメタリカのライヴなので、わかっちゃいたけど翌日も含めて2日間セットはマストだったなと言っても後の祭り。でもいいんです! 今度はいったいいつ観られるかな……でもイメトレはほどほどに待っていたいものです。