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龍宮ナイト

連載
NEW OPUSコラム
公開
2010/05/18   23:00
更新
2010/05/18   23:05
ソース
bounce 320号 (2010年4月25日発行)
テキスト
文/岡村詩野

 

関西アンダーグラウンドの異端児たちが集うレアでディープで珍妙な宴を濃密にパック!

 

龍宮ナイト -A

 

2006年にスタートして以来話題を集める〈関西ゼロ世代in名古屋〉といった感じのイヴェント、〈龍宮ナイト〉。発端はバンドの多くが名古屋でライヴを行わなくなっている現状を打破しようとしたものだったという。一見、異端児ミュージシャンたちの宴のようで、実際はイヴェントとしての理想形のようなものがしっかりと刻まれたこの企画のライヴDVDが、このたび十代暴動社からリリースされた。

ここでは〈龍宮ナイト〉の拠点である名古屋・CLUB ROCK'N'ROLLと、大阪は梅田・Shangri-Laでのステージからセレクト。あふりらんぽやneco眠る、ワッツーシゾンビ、BOGULTAといったこの筋の人気どころから、パンツ一丁でステージに立つパフォーマンスが衝撃的なクリットリック・リス、結成して10年近いキャリアを持つフリー・ポップ・デュオの巨人ゆえにデカイ、ファンクとチンドンが合わさったようなアウトドアホームレス、KING BROTHERSのメンバーによるN'夙川ボーイズといったところまでが替わるがわる登場する。そのパフォーマンスは確かにいずれも異形だ。しかし、ここにはライヴ・イヴェントの原点がある。たった一人の女性が始めた手作り企画らしい自由度の高さと、その場をとことん謳歌しようとする出演者たち、そしてそこに我も入らんとする無邪気なオーディエンス――その関係性は猥雑なようで実に健全だ。開場前の準備段階からTシャツなどが販売されている場内の様子もチラリと映るが、看板やセットはすべて手描きだし、そこにいる誰もが収益を気にせず楽しんで助け合っている。ロック・フェスの商業化が加速するいまだからこそ、ひとりでも多くの人の目に触れてほしい作品なのだ。

 

▼文中に登場したアーティストの作品を紹介。

左から、5月21日にリリースされるあふりらんぽのニュー・アルバム『WE ARE UCHU NO KO』(スッポンポン)、neco眠るの2009年のミニ・アルバム『EVEN KICK SOY SAUCE』(DE-FRAGMENT)、ワッツーシゾンビの2009年作『WE ARE THE WORLD!!!』(ROSE)