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w-inds.

連載
360°
公開
2010/03/27   17:00
更新
2010/03/27   17:06
ソース
bounce 319号 (2010年3月25日発行)
テキスト
文/出嶌孝次

 

w-inds.はいかにしてアナザー・ワールドに辿り着いたのか?

 

w-inds. -A

 

別世界へと誘うロボ声でのナヴィゲーションから3人の力強いコーラスが重ねられ、日本産R&Bの重鎮・今井了介による硬質なダンス・トラック“New World”へ雪崩れ込んでいく。それに続く“CAN'T GET BACK”も昨今の世界的なアーバン・ポップの流れに沿ったハウシーな加速型のアップ・チューンだし、さらに今井とUSK TRAKが再度登板した“Re:vision”はトランシーなシンセで味付けされたエレクトロ仕立てだ。それで……とか言ってるうちに最後の曲まで行ってしまいそうなほど、ニュー・アルバム『Another World』でのw-inds.は明確に何かが違う。まあ、何が違うかって曲のカラーや完成度が段違いだっていうシンプルなことなのだが、何にせよ今回ばかりはファン以外にも聴いてほしいね!ってことで、彼らがどのようにしてこの地平に至ったのかを別掲のディスクガイドも含めて簡単に振り返ってみよう。

w-inds.の結成は2000年。千葉涼平をリーダーに橘慶太、緒方龍一が集まり、DA PUMPの弟分的なポジションで2001年3月にデビュー・シングル“Forever Memories”をリリースしている。当時の3人は平均16歳ぐらいか。コーラスに元気なラップも絡めたいわゆるティーン・グループ然とした爽やかな楽曲で3人はヒットを連発し、2枚目の“Feel The Fate”以降は現在に至るまですべてのシングルがチャートでTOP10内にランクインしている(正直、全曲がNo.1とかより凄いな~と思ってしまうわな)。2004年に最初の台湾公演を行ってからは、中国や香港、韓国などアジア各国で高い人気を誇り……というのが、いわゆる音楽性じゃない部分のあらましとなるだろうか。

年齢を重ねるに従ってティーン時代の方法論ではやっていけなくなるのが世の常だし、予兆はずっとあったのだろうが、ここで振り返ってみれば最初の変化は2008年末に出したシングルの1曲に先述の“CAN'T GET BACK”が選ばれたことにあったのではないか。そこで手応えを得たのか、BIGBANGのG-DRAGONと手を合わせた次のシングル(2009年)では“HYBRID DREAM”にてBACHLOGICのトラックを採用している(同時期の彼の仕事といえばJAY'EDやSEEDAだ!)。先述の“New World”が続いて、文字通りの〈新世界〉=よりソリッドな現行のダンス・ミュージック路線へと到達したのだ。

その決定的な一曲に対応して『Another World』と名付けられたアルバムは、ドリームやニーヨ以降のポップ・スタンダードな良さを上手く弁えつつ、実際に“Truth~最後の真実~”ではニーヨを起用しているが、それが決してズバ抜けて聴こえないのもいい。先に触れた以外にも良曲の連続……というか、日和ったり手綱を緩めたりして後戻りしたような曲がひとつもないのが素晴らしいのだ。単にチャート上で見ても2度目の全盛期を迎えている3人ではあるが、そういう数字とは関係なく、いまのw-inds.にはさらなる新世界を大きく期待させる何かがあるのだ。本当です。

 

▼w-inds.の作品を紹介。

左から、最新ライヴDVD「w-inds. Live Tour 2009 "SWEET FANTASY" in Hong Kong」、w-inds./FLAME/Leadのリミックス企画盤『buddies』(共にポニーキャニオン)

 

▼関連盤を紹介。

左から、ニーヨのベスト盤『The Collection』(ユニバーサル)、今井了介の手掛けたTEEの2009年作『Palette』(nano rebel)、BIGBANGの2009年作『BIGBANG』(ユニバーサル)、BACHLOGICのリミックスを収めたAI feat.安室奈美恵のニュー・シングル“FAKE”(ユニバーサル)