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読む宇多丸

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NEW OPUSコラム
公開
2010/03/20   16:30
更新
2010/03/26   22:17
ソース
bounce 319号 (2010年3月25日発行)
テキスト
文/出嶌孝次

 

音楽界きっての論客にして映画博徒……マイクの刺客がまたやってきた!!

 


写真:わだりか

休止期間をものともしない結果を出したRHYMESTERの『マニフェスト』ですが、その期間がむしろ絶好の〈タメ〉として醸成されたのは、BUBKA誌の連載「マブ論」やTBSラジオの番組「ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」など、新たな層の支持を地固めした宇多丸の活動ぶりからもあきらかでしょう。今回はちょうどいいタイミングで登場した書籍2冊を紹介します。ちなみにどっちもトイレで読んだりしたら出られなくなるので注意が必要ですよ……。

まず、〈増補新装版〉で再登場した「ブラスト公論 誰もが豪邸に住みたがってるわけじゃない」。これはかつてblast誌で連載されていた宇多丸、前原猛、古川耕、高橋芳朗、郷原紀幸という5人の対談記事をまとめたもので、正論と暴論を上手く織り交ぜて着地させる緻密な〈まとめ話芸〉のルーツが楽しめます。増補コンテンツは近況報告も兼ねた対談などですが、流石にかつてのファミレス感は希薄なので、今回初めて手に取る人は旧版の部分から先に読んだほうがいいかも?

一方、それに先駆けて発行され、すでにヒット中なのが、先述したラジオ番組中の映画評論コーナーをまとめた「ザ・シネマハスラー」。これがまたメチャクチャおもしろいんですが、陳腐な〈毒舌〉や批評のための批評に陥らず、〈商業大作をあえて褒めてみる〉みたいなスノッブな感じもないので、クソ扱いされた映画にもなぜかある種の興味を抱かせるのが凄い。これは作品個々じゃなく、映画そのものへの愛ゆえでしょう(これは音楽について文章を扱う人すべてにも求めたい部分であります)。要点を理詰めで平易に解説していく例の話法が的確に文章化されているのも魅力的で、これは編集芸の成果でもありますね。「ROOKIES」や「しんぼる」を完封する第2集がいまから楽しみです。

 

▼文中に登場した作品を紹介。

左から、対談集「ブラスト公論 誰もが豪邸に住みたがってるわけじゃない 増補新装版」(シンコーミュージック)、TBSラジオ「ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」編の映画評論集「ザ・シネマハスラー」(白夜書房)、RHYMESTERの2010年作『マニフェスト』(NEXT LEVEL/キューン)