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渡邊琢磨コンサートクロスレヴュー 5/30@世田谷美術館 講堂(RH)

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Web Exclusive
公開
2014/06/23   19:01
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text:高見一樹

世田谷美術館に併設されたこのホールは、美術館の企画展に因んだレクチャーや音楽コンサートが催されることが多いが、たまに独立したコンサートが行われてもいる。過去に大友良英、高橋アキ、スティーブ・レイシーなどなどのコンサートに来たことが何度かあった。今回、コンボピアノこと渡邊琢磨が新しい企画を下ろすというので久しぶりに訪れた。

今年、彼はアルバム『Ansiktet』を先頃リリースしたのだが、管弦楽作品を引っさげての久しぶりの再登場は、かつてコンボピアノを中心に彼の音楽を楽しんできたファンを驚かせた。今回のコンサートはそのアルバムの作品を将来コンサート形式で発表するための布石として企画されたものとあらかじめ聞いてはいたが、弦楽四重奏と弦楽奏者幾人かとのピアノを交えたアンサンブルによる構成と知り、又何かそれはそれで新しいことが始まると感じわくわくしながら会場に足を運んだ。




©三田村亮



コンサートは二部構成、一部に弦楽四重奏、二部でピアノを交えて演奏するというプロットということだったが、リハーサルでは主に一部で演奏される弦楽四重奏を入念にチェックしていた。いわゆるポストクラシック風味のもの、それが何なのかさっぱり未だに分からないし興味もないが、そんなものとはまったく違うのだというのは観ていてすぐに分かった。つまりアンサンブルは通常の編成と異なる、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバスがそれぞれ一名づつで構成される弦楽四重奏だったし、中音域から低音域にアンサンブルのバランスを偏らせた面白いアイデアにわくわくした。楽曲は、アンサンブルのメンバーのインタープレイに凝った工夫がとても面白く、演奏して楽しいのではないのだろうかと思わせる仕上がりだった。同じブレーズを楽器間で受け渡しているのだが(こう書くとカノンか?と思われるがそうじゃないですよ)、こうした演奏者とのコミュニケーションに基づく設計に十分に配慮さてもいた素晴らしい作品群だった。響きだけで何風と書いても意味がないが、聞いていてギャヴィン・ブライヤーズの弦楽四重奏第一番、あるいはフィリップ・グラスのベケットのために書いた三番や、いまのところのグラスの弦楽四重奏の作品としては最新作である五番(これは素晴らしい曲ですよ!)を思わせた(このように書くと、あっミニマルねっと思う方もいらっしゃるかと思いますが、そもそもブライヤーズ、グラスの弦楽四重奏ってミニマルじゃないですよ。興味のある方は是非、聞いてみてください、いい曲ですよ)。リズムのアイデアも面白そうではあったが、効果的な演奏とはまだ言えない状態だったのが残念である。




©三田村亮



新作を下ろすこと、新作を聞くことというのは演奏も含め時間をかけて素晴らしいものに仕上がっていくプロセスを楽しむことだということは、意外と受け入れられていないのがポピュラーにおいてもクラシックにおいても実情だと思う。初演がいつも素晴らしいというのは、正直奇跡に近いか、初演という言葉の魔法にかかった人の錯覚でしかない。しかしこれらの作品の演奏が熟していくのを楽しむのがこれも生演奏を聞く楽しみである。是非また同じプログラムの再演をしつこくやってほしい。彼のピアノ演奏については、彼の中でアメリカの音楽についての印象がどこかかわったような気がする、そんな内容の演奏だったと記しておく。今後が楽しみである!