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第65回――サム・ディーズの世界

ESSENTIAL――サム・ディーズのCD作品と彼の名曲を収めた入手が容易な作品を紹介するよ!(1)

連載
IN THE SHADOW OF SOUL
公開
2013/03/27   17:59
更新
2013/03/27   17:59
ソース
bounce 353号(2013年3月25日発行)
テキスト
ディスクガイド/林 剛、出嶌孝次

 

SAM DEES 『The Show Must Go On』 Atlantic/Real Gone/ヴィヴィド(1975)

名盤の誉れ高いファースト・アルバム。今回の初CD化に際して追加された73〜75年のシングルも含め、ニュー・ソウル路線のメッセージ曲や南部マナーの荒々しいジャンプ・ナンバーなどが彼らしい幅広さを伝えるが、その熱くラフな声と繊細な歌表現が最高に生きるのは、やはり失恋を描いた表題曲などのスロウ・バラードだろう。“Come Back Strong”のようなモダンなダンサーも好演。男泣きを誘う一枚だ。*林

 

SAM DEES 『The Heritage Of A Black Man』 Kent

サム自身が歌う未発表デモを中心に収録した編集盤。ボビー・パターソンで知られる“What Goes Around Comes Around”やベンE・キングらが歌うことになる“Standing In The Wings Of A Heartache”などを聴くと、これらサムのデモ(歌)がいかにお手本にされていたかがよくわかる。70年前後にクリントン・ムーンらと作った曲も未発表ながらクォリティーが高く、サザン・ソウル・シンガー然とした熱い歌に引き込まれる。*林

 

SAM DEES 『Second To None』 Kent

95年にUKで組まれた未発表曲を含む編集盤で、サムが他人に提供した代表的な楽曲のデモがズラリと並ぶ。なかでもタイロン・デイヴィスに書いた“Homewreckers”とロリータ・ハロウェイ“Cry To Me”のデモは、簡素なバッキングながらサムの辛口ディープな歌声に唸らされること必至。ジョン・エドワーズ“Vanishing Love”やウィンディ・シティ“Win Or Lose”などのデモも貴重だろう。『The Show Must Go On』で歌われた曲も含む。*林

 

BILL BRANDON 『On The Rainbow Road』 Soulscape

サムの“So Tied Up”などの共作者でもあるビル・ブランドン。そんなビルのシングルや未発表音源を含む本編集盤は、半数近くがムーンソングなどから発表したサム制作のバーミングハム録音曲で、後にジョン・エドワーズも歌った72年の“Stop This Merry-Go-Round”から76年の“Tag, Tag”まで、サム以上にハードでディープな熱い歌を聴かせてくれる。サムの書く曲をもっとも魅力的に歌い上げた南部のシンガーだろう。*林

 

BEN E. KING 『Supernatural』 Atlantic(1975)

当時サムとレーベル仲間だったベンE・キングは、復帰作となった本作でサムの曲を3曲取り上げている。フレデリック・ナイトとの共作曲“Drop My Heart Off”はサムらしいセンスが滲み出たディープで情熱的なバラード。一方、“Extra-Extra”やベティ・クラッチャーともペンを交えた“Happiness Is Where You Find It”はフィリー・ダンサー風のアップで、次作『I Had A Love』(こちらもサム作のナンバーを収録)を予感させる。*林

 

MARGIE JOSEPH 『Margie』 Atlantic(1975)

アトランティック在籍時にサムが関わった仕事のひとつ。サムのペンによる曲は“Just As Soon As The Feeling's Over”のみだが、このバラードが実に美しい。バーナード・パーディらによるNYの洗練されたバックと大らかなマージーの歌が奥行きのある曲の魅力を十二分に引き出した。南部から都会へ進出したマージーのキャリアもサムとダブる。*林

 

ANITA WARD 『Ring My Bell: The Definitive Anthology』 Smith & Co

同郷のフレデリック・ナイトともパートナーを組んでいたサムは、フレデリック主宰のフアナから出たアニタ・ワードの作品でもペンをとっていた。彼女のキュートな歌声が冴え渡るメロウ・ディスコ“Make Believe Lovers”や爽やかな“Spoiled By Your Love”は共作。一方、単独で書いたバラード“Sweet Splendor”はサムの真骨頂に胸を打たれる。*林

 

THELMA JONES 『Thelma Jones』 Columbia(1978)

ミリー・ジャクソン的な雰囲気を持つテルマ・ジョーンズにもサムの曲はピタリとハマった。特に、スケールの大きいバラード“Lonely Enough To Try Anything”とジャンプ・ナンバー“I Want What You Want”は典型的なサムのスタイル。78年のシングル“Love Look What You Got Me Into”はサムとバート・デコトーの共作で、当時らしい都会的な洗練を感じさせる。*林

 

TAVARES 『Madam Butterfly』 Capitol(1979)

サムがロン・カーシーと組み始めた頃に楽曲提供をしたボビー・マーティン制作盤。サムのペンによる“Games, Games”“Let Me Heal The Bruises”“My Love Calls”の3曲はいずれも美しく上品なスロウ・バラードで、タヴァレス兄弟は整ったハーモニーと共に丁寧に歌い上げてみせる。ボビーのフィリー流儀のサウンドも含め、マンハッタンズにも通じる一枚。*林

 

ATLANTIC STARR 『Radiant』 A&M(1980)

ジェイムズ・アンソニー・カーマイケルが制作したA&M時代の3作に楽曲提供をしていたサム。その1作目からは、デイヴィッド・ルイスとシャロン・ブライアントの男女リードで聴かせる“Am I Dreaming”(後にオール・スクール&エクスケイプがカヴァー)、サムとロン・カーシーが共作した“Send For Me”という2曲の極上スロウ・バラードが誕生している。サムの曲をもっともロマンティックに歌い上げたのが彼らだった。*林

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