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第6回:Indigoさん編

連載
アイドルのいる暮らし
公開
2012/10/16   13:30
更新
2012/10/16   13:30
テキスト
文/岡田康宏(サポティスタ)


平日のライブ会場やショッピングモールで行われるイベントで、いつも見かける大人の姿がある。けっこういい歳してるけど、この人たちはいったいどんな生活をしているのだろう?

大人のアイドルファンは、アイドルファンであるだけではなく日常を生きる社会人でもある。お金も暇もある大人のオタクには、元気なだけの若者にはない深みと趣きがある。ライフスタイルとしての現場系アイドルファン、大人のオタクの遊び方とは?



今回お話を伺ったのはIndigo(@indigo13love)さんだ。大学を中退しバイト先の会社に就職した22歳。「ラブひな」の堀江由衣をきっかけに声優にはまり、中学生で初現場に。以降、声優オタとして白石涼子、野中藍、明坂聡美、戸松遥を推し、10年の「マジすか学園」をきっかけにAKBオタに。そこからアイドル現場に主戦場を移して、現在はソロで演歌歌手としても活動するAKB48の岩佐美咲推し。若くしてオタ歴10年を超すベテランの彼に話を聞いた。



声優オタの頃はアイドルにまったく興味がなかった



声優にはまっていたのは中学から大学に入るくらいまでです。子供の頃からアニメはずっと見ていたんですけど、途中からアニメは見なくなって、声優にしか興味がなくなったんですよ。最初は「ラブひな」でハマった堀江由衣の在宅から始まって、「ネギま!」のイベントから現場に行き始めた感じ。お金は高校生まではお小遣いで、でもライブのチケット代とサイリウム代くらいしかかからないのでそんなには使っていません。当時は遠征もせず、関東のライブしか行っていなかったので。大学に入ってからは、今就職している会社でバイトをし始めて、わりともらえる感じだったので地方にも行きつつ、スフィア(※注1)辺りからは全国ツアーだと名古屋とかまでは行っていました。
*注*1 スフィア:2009年、寿美菜子、高垣彩陽、戸松遥、豊崎愛生の4人の声優で結成されたユニット。

声優オタの頃はアイドルにまったく興味がなかったんです。違う世界だと思っていましたから。スフィアは戸松遥目当てでわりと初期から見ていて、ファーストシングルのときは石丸電気の7階でイベントをやって椅子席が埋まるか埋まらないかくらい、ファンが300人もいないくらいからスタートしているんです。2枚目のシングルのタイミングぐらいで「けいおん!」ブームが始まって豊崎(愛生)のオタがめちゃめちゃ増えてきて、次のイベントが日本青年館、その次がJCBホール、そこから1年半で武道館まで行きました。ファーストシングルのときはCD1枚買ったらイベントが見れて握手ができるぐらいの感じでしたからね。

声優イベントはアニメがヒットすると、どかっと人が増えますね。アニメが好きで入って来た人と元々声優現場にいた人では現場での雰囲気からノリ方まで全然違うので、現場の空気が全然かわっちゃうんですよ。慣れていない人が一気にたくさん来て、現場が荒れてきちゃうということがその頃はよくあって、スフィアもそれで離れてしまいました。

声優のイベントは声優個人のイベントはほとんどなくて、だいたいアニメのイベント、作品のライブだったんです。だからアニメの仕事があるときはイベントもいっぱいあるんですけど、仕事がないときもあるので、そうすると現場もないし、どうにもならない。作品に人気があって2期とか3期とか続けばイベントもどんどんあるけど、逆に作品に人気がなくて続かなければ続かない。アニメのためにスポットでユニットを組んでライブとかやったりするので、ユニットを組んで3ヶ月後には解散とか、そういうことを繰り返しているのを追っかけてる感じでした(笑)。

アニメファンとアイドルファンは別々の人種ですが、アニメファンと声優ファンでもまたやっぱり全然違うんですよ。例えば、アイマス(※注2)の現場なんかは最初他の声優現場よりも作品のファンの比率が大きくて、全然ノリが違ってたんです。声優オタにはだいたい特定の応援パターンがあって、クラップとPPPHとコールが中心で、わりと固かったんですよね。最近はMIX(※注3)を打っている現場とかもあるみたいなんですけど、僕の行ってた頃はだいたいはオーソドックスな跳んで叩いて、という応援の仕方が主流でした。だからAKBのライブに初めて行って一番驚いたのが、オタがみんな好き勝手にやっていること。サイリウムの色がバラバラなんですよ。声優だとソロの子は、この曲は何色、この曲は何色とか曲で統一することが多くて、グループだと、メンバーごとのイメージカラーが決まっていたりするので。
*注*2 アイマス:バンダイナムコゲームスが制作するゲーム「THE IDOLM@STER(アイドルマスター)」の略称。プレイヤーはアイドルのプロデューサーとなり、歌って踊るアイドルを育てていく。登場するキャラクターが歌う曲のCDなど関連商品も展開されている。
*注*3 MIX:アイドルファン特有のコールの一つ。90年代からあるオタ芸の一つだがAKB以降、大流行している。



いつ現場がなくなるかわからない状況と常に戦っている



最近のアイドルは毎週イベントをやっていたりするから、全部行く必要はないかと思ったりもするけれど、声優はイベントの数が少ないので、あったら行くしかない。僕が一番長かったのは野中藍ちゃんですけど、接触なんてたぶん10回もない。あってもお渡し会とかで、握手会とかは1回もなかったんじゃないかな。握手会は最近のアイドルっぽい売り方をしている声優さんでもたぶんあんまりないですね。ほとんどやらないし、やるとしても例えば写真集の発売イベントで、70人、80人限定でほとんど取れないとか。それも年に1回か2回とか。結局のところ、接触は楽しいので、一度アイドルに行っちゃうと、もう戻れなくなっちゃうんですよ。とくにスフィアなんか行っていた人たちはそういう感じでしたね。スフィアをアイドルって言うとめちゃめちゃ怒る人とかいたんですけど、ほとんど売り方はアイドルでしたから。

声優の現場はアイドルの現場と比べるとイベントの回数はすごく少ないし、やっぱり距離は遠い。声優オタはいつ現場がなくなるかわからない状況と常に戦っているので「行ける現場があったら行け」というのが体に染み付いているんです。そうすると、アイドルに行って突然大量の現場を目の前に差し出されると行けるだけ全部行ってしまって(笑)。現場が溢れていて、接触もたくさんあるという状況を知ってしまうと戻れない。現場は少ない分お金を使う文化だったので、ガッツリ行っちゃうんですよ。

僕は09年から10年くらいまでスフィアを見ていたんですけど、その頃にTwitterで相互フォローになった人とかは、みんな今、アイドルオタになってますね(笑)。スフィアもこの間また、横浜アリーナでやったくらいに人気はあるみたいなんですけど、当時の知り合いでスフィアに今も行っているという人はほとんど残っていないので、どこにいるのかなと(笑)。昔からの知り合いはみんなアイドルに流れてきてしまった。

声優は仕事がなくなると推せなくなるんですよ。そうなると暇になって、現場があるところに行ってしまう。岩佐(美咲)は現場が多くて、今年の上半期に行った現場は90くらいなんですけど、そのうち岩佐の現場が50くらい。握手券が250枚くらい。それでもそれほど買っていない方だと思います。やっぱり毎回、何百枚買う人っていますから。岩佐だとワロタ(渡り廊下走り隊7)と自分の演歌とAKB本体とでなかなかイベントが途切れなくて、演歌は一年中同じシングルでキャンペーンが打てるし。そうするとわりと毎週会えるんです。6月とかは毎週イベント。AKBの握手会があって、ワロタのイベントがあって、演歌のキャンペーンがあって。休日だったら地方もいくし、それは楽しいですよね。



AKBの現場は減ってきている



AKBはマジすか新規です。初めて買ったCDが2010年4月の『神曲たち』で。シングルで言うと2回目の総選挙をやった“ポニーテールとシュシュ”の前ですね。今ほど毎日テレビに出ている感じではなかったんですけど、もうわりと売れかけている時期です。偶然深夜に見てた「マジすか学園」がおもしろくて、ちょうど最終回の直前に横浜アリーナでコンサートがあったんですよ。当時は簡単にチケットが取れたので行こうと思って。それが初現場で、楽しかったのでその日のうちにファンクラブに入って、次のCD『神曲たち』のときから劇場盤を買ってイベントに参加するようになりました。

最初はスフィアと並行して行っていたんですけど、だんだんイベントが被るようになってきて、そうしたらAKBを優先していたので、1年くらいしたら完全にAKBしか行かなくなりました。最初は一人で行っていたんですけど、ちょうどそのころに今、自分がVJをやっているクラブイベントの初回があって、そこで友だちが増えていったんですよね。Twitterもあって、だんだんその辺の人たちと連番で行くようになったり、現地で集まるようになったり。

岩佐に推し変したきっかけは、ワロタの“へたっぴウィンク”のニコファーレのイベントです。当時僕は菊地(あやか)推しだったんだけど、岩佐も前から普通に握手に行っていて、岩佐には岩佐推しだと思われていたらしいんですね。でライブで菊地ばかりを見ていたら、握手会のときに「わたし、見てたんだけど、なんで目合わないの? わたしのこと見てなかったでしょ」ってめっちゃ怒られて(笑)。そういうことが何回かあって、気がついたら岩佐オタになってました(笑)。岩佐はファン層もちょっと特殊なんです。みんな静かに演歌を聴いているので、騒ぐ感じの人があんまりいないんですよ。AKBは人数が多いので、本人のキャラや接触のタイプ、仕事の種類とかで、現場の空気もファン層も全然変わりますね。

総選挙は33位でした。ただ僕はあまり興味がないですね。美咲ちゃんの場合は、ソロデビューしているんで、ソロのほうが大事かなと。本人は上に行きたいみたいですけど、33位という順位は予想以上です。渡り廊下ではまゆゆ(渡辺麻友)につぐ2番手ですから。「ゆび祭り」の会見のときは各グループ2人ずつ代表が出てきたんですが、そこにまゆゆと一緒に岩佐が出ているんですよ。総選挙の順位が上がったのは単純にファンが増えたからだと思います。テレビに出るようになったのが強いですね。やっぱりテレビに出ている子が上に行きます。今はもう普通の人がCDを買って投票しちゃうんで、オタが1人で頑張って何百枚入れるみたいな話は、そんなに聞かなくなりました。去年の総選挙は菊地に100票とか入れたんですが圏外で、それで萎えたというか。規模が大きくなったんで、オタク1人の頑張りではどうしようもなくなってきているんです。総選挙を見ること自体は楽しいんですけどね。

美咲ちゃんの場合はもう手に職を付けた感じがあるので、卒業しても演歌歌手としてソロでやっていけると思います。まだ17歳なので、AKBにも当分残ると思いますけど。デビュー曲で演歌チャート1位だったので、今年の目標は有線大賞と紅白ですかね。NHK関係の仕事が多いし気に入られてるみたいなので可能性はあるのかなと思っています。もうソロデビューして半分は演歌歌手になっているんで、岩佐が卒業したら、AKBの現場には行かなくなりそうですね。今のところAKB自体にはそんなにこだわりはなくて、推しがどうするか次第です。

うちの子の場合は幸運にもソロがあって、ユニットもあって、AKB本体のイベントもあって握手会もあって。現場もあるし、それなりに近さもあるので、現場や近さを求めて他に流れていく必要がないんです。ただ、AKBの現場ってほかのメンバーだと減ってきていると思うんですよ。劇場公演は全然当たらないし、コンサートと握手会しか現場がない子もいると思いますから。一般の人だったらたまに握手会だけ行ければいいんでしょうけれど、アイドルオタとしての気質を持った人は、そういう部分でモチベーションを保てなくなると、ほかの現場に流れていくんだろうなと。そういう部分ではAKBから、ちょっと前だとスパガ(SUPER☆GiRLS)とかぱすぽ☆に流れた人は多いですよね。


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