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連載/コラム

渡海真知子『O Cantador』

カテゴリ : o-cha-no-ma LONG REVIEW 

掲載: 2012年03月02日 21:16

ソース: intoxicate vol.96(2012年2月20日発行号)

text : 佐藤由美

貴重! 正統派サンバへの素敵な執着

オーセンティックで垢抜けた、新旧サンバの好選曲。演奏陣がリオの一流どころ。チャーミングな歌声にさりげなく漂う気品。80年代までならいざ知らず、今のブラジルでこんなサンバ・アルバムは作れない。

プロデュースを任されたパンデイロ奏者は、長らくサンバ界の貴公子パウリーニョ・ダ・ヴィオラをサポートし、ショーロ黄金時代より続くエポカ・ヂ・オーロの重鎮ジョルジーニョを父に持つ、気さくな優等生セウシーニョ。自身の人脈をフルに活かし、歌い手の魅力を存分に引き出しながら、朋友のギタリスト加々美淳との共同作業を、サンタ・テレーザのスタジオで、大いに楽しんだに違いない。そうお察しする。

ゴンザギーニャ81年作の1曲目は、気負いゆえのクセのようなものを少々歌に感じてしまうが、どっこい、ホベルト・ヒベイロ75年の名唱で知られる2曲目は、きらめくクリスタルの歌声に転じる。女主人イヴォニ・ララ作《夢見て歌うために生まれた》でも、優しげな歌い口が耳に心地良い。アリ・バホーゾ31年作はボサ風味を湛え、珍しくジャズっぽいフレーズをちりばめたクリストーヴァゥンのピアノが聴ける。彼のピアノだけを身にまとった、ドリ・カイミ67年のタイトル曲は、とりわけ味わい深い出来。ノエル・ホーザ33年のサンバは、ギターとトロンボーンのみの伴奏。ほかにも、シニカルなイタマール・アスンサゥン作の極上・洒脱な《レオノール》、エポカ・ヂ・オーロ参加の名曲など、随所に趣向を凝らし、重要な音の余白も損なわぬ、贅沢な仕掛け。通好みというより、サンバに対する素敵な執着というべきだろうか。

2005年に活動をスタート。08年発表の前作が師匠(?)加々美淳との二枚看板で、これが初のソロ作とは、頼もしい限り。母国の人気シンガーは、今やこぞって「現代の個性」なる旗印を掲げ、サンバを厚塗り化粧のサウンドで囲ったり、はたまた狭い私的空間に閉じ込めたりして弄ぶ。新種のアピール結構、踊らずともよし。だが、人々と歌を共有する開かれた精神こそ、サンバの核心ではなかったか。どんな編曲・脚色を施そうと、地域や時代を越え歌い継がれてきた楽曲にだけ許される自然な共感、サンバ本来の魂を切り捨てちまっちゃあ、台無し……次世紀に歌が残らんよ。真知子さんは貴重なお人。あなたのサンバ愛に乾杯だ。

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