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LITTLE DRAGON

連載
360°
公開
2011/10/28   15:50
更新
2011/10/28   15:50
ソース
bounce 337号(2011年10月25日発行号)
テキスト
文/出嶌孝次


竜に九似あり、リトル・ドラゴンとユキミ・ナガノに歴史あり

 

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デーモン・アルバーン様が〈いち早く〉発見し、クェストラヴがお気に入りと明言してTVショウに招くなど、いまや欧米で昇り竜の勢いを見せているスウェーデンはヨーテボリ出身のインディー・バンド、リトル・ドラゴン。このたび日本盤も出たサード・アルバム『Ritual Union』に前後しては全米ツアーも敢行し、ラファエル・サディークやサブトラクト作品への客演が話題になったのも記憶に新しいだろう。とはいえ、フロントウーマンのユキミ・ナガノが日系であることも関係あるのか、日本ではそれ以前から親しみを持って注目されてきた存在なのである。

メンバー全員が高校生だった96年に結成され、揃って芸術大学に進学するなど、途切れることなく活動を続けてきたというリトル・ドラゴンだが、その浮上までにはユキミ単独での飛躍があった。地元のジャズ・コンテストに出ていた彼女の歌を偶然会場にいたクープが聴き、彼らの“Summer Sun”(2001年)にオファーしたのだ。この曲が評判となって彼女の名はUKや日本のクラブ・シーンで一気に広まり、北欧の才能たちがその界隈で注目を集めるきっかけになった。

ユキミ最初期の録音と思われるのはスウェル・セッション(アンドレアス・サーグ)に客演した“The Music In Her Eyes”。2000年に地元のホロウからリリースされたこの曲に続き、彼女はクリストファー・ベルグ(ヒルド)やアーネストといった地元の面々と多くの楽曲を残していく。2004年にヒルドにインタヴューした際、彼女は「EUのモータウンでメインストリームのR&Bをやる」とか話していたからソロ志向もあったのだろうが、その話が具体化することはなかった。

紆余曲折を経てリトル・ドラゴンにフォーカスした彼女が、オフ・ザ・ウォールというヒルド主宰のレーベルからバンドで最初の7インチ『Test/4ever』を出したのは2006年。1000枚プレスされたそのシングルがラフ・トレードの〈Single Of The Week〉に選ばれたこともあり、初作『Little Dragon』は早耳なインディー・ファンの間で大きな注目を集めることになった。それからのマイペースな快進撃は以下のディスクガイドでも紹介している通りだ。新作『Ritual Union』の背後に透けて見える音楽要素の多彩さも、こうした経歴を踏まえればより見えやすくなるだろう。さまざまな経験から得た滋養を翼に変えて、ドリーミーなドラゴンはユニークな音のなかをまだまだ昇っていくのだ。

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