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連載/コラム

Plastic Tree @ 両国国技館 2011年10月8日(土)

連載: ライヴ&イベントレポ 

掲載: 2011年10月12日 18:00

更新: 2011年10月12日 18:00

文/土田真弓



Plastic Tree_特集カバー



3月20日に静岡・清水JAMJAMJAMで幕を開けた〈LIVE HOUSE TOUR 2011「アンモナイト(小)」〉の終了後、夏のフェス/イヴェント出演期間を挟んでリスタートした〈LIVE TOUR2011「アンモナイト(大)」〉。その7か月に及ぶツアーが、10月8日に開催された東京・両国国技館公演をもって千秋楽を迎えた。

「〈記憶〉だったり、そういうものを曲にして、それが〈記録〉になって、ずっと残っていってほしい」。

以前、最新アルバムのタイトルに冠された〈アンモナイト〉に対するイメージを訊ねた際、有村竜太朗(ヴォーカル)はこんな想いを語ってくれた。本作に楽曲として刻まれた記憶、そして長きに渡って重ねてきたライヴにおける記憶。その蓄積を、彼らはひとつのショウとしてどのように完結させたのか。

会場に入って舞台セットに目を向けると、ステージ全体を覆うばかりに大きな紗の幕が、たおやかな波形――2階に位置する筆者の席から見ると、遥か上空からゆっくりと落下してきて、地上に到達する寸前で時を止めたような――そんな形状を保って吊るされている。

客電が下りた途端、会場全体から悲鳴にも似た歓声が沸く。一向に現れないメンバーを待って口を噤んだフロア。その静寂を破ったのは、メランコリックなピアノのフレーズと微かなギターのノイズだ。筆者の記憶が正しければ、これは〈アンモナイト(小)〉のファイナルの終演後、〈アンモナイト(大)〉の日程が発表されたエンドロールのバックで流れていた曲だと思うが、そのまどろむような旋律に導かれるが如く、レーザーがゆっくりと場内を徘徊し、舞台奥のスクリーンには赤からうっすらした青へと変化するアブストラクトな映像が投影される。そのマーブル模様は徐々に球体を成し、その球体が連結して螺旋を描き、その螺旋は手前から奥へと渦を巻きながら消えてゆく。ここで、ふたたび有村の発言を思い出した。





「あの渦を巻いているような感じには、螺旋階段を降りてくような――自分の思考を掘り下げてくようなイメージがあるというか。(レコードやCDのように)回ってて、丸くて、元は生き物で――そこが音楽と近いかな、って」。

そんな〈アンモナイト〉を巡る話と目の前で回転する螺旋を重ね合わせていると、スクリーンには〈Plastic Tree – ammonite(L)〉とタイトルロールが、続いてオープニングの曲名が映し出される。

――「ブルーバック」。

6月で一旦完結したツアー〈アンモナイト(小)〉は、ライヴのオープニングを意識して制作された“Thirteenth Friday”に始まり、アルバム『アンモナイト』と同じく“ブルーバック”で幕を引くという構成だった。けれど今回の彼らは、以前とは反対に『アンモナイト』を取り巻く時間を遡ろうとしている。

アンニュイな2本のギターが浮遊しながら絡み合い、独白のような有村のヴォーカルが言葉を紡いでいく。メンバーにスポットは当たっておらず、代わりに紗の幕のうえでゆらめく色とりどりの光が美しい。そこからドラムの乱打を合図に轟音パートに移行する瞬間、4人の頭が同時に揺れたのが見えた。切ない幕開けに浸る余韻を与えず、続く“みらいいろ”“アイラヴュー・ソー”では明滅するストロボライトのなかで重厚なリフの応酬を繰り広げ、アグレッシヴな気焔を上げる。

「やあ」「やあやあ」「やあやあやあ」と、客席とのお決まりの挨拶を交わすと、「今回は『アンモナイト』にいろんな曲を足してるんですけど……今日は晴れてました?」というフリから、雨上がりを背景にした“水色ガールフレンド”。ファンタスティックな恋の歌を軽快にプレイした後は、和情緒が広がる“雪月花”、スミス“This Charming Man”のあのフレーズからメタリックな速弾きまでが炸裂する“バンビ”と立て続ける。

「慣れた? この雰囲気。上にお相撲さんとか居ますけど(歴代の横綱の肖像が飾られている)。俺らはね、すっかり馴染んでます」と、ここでふたたび有村のMC。各メンバーに対する声援が飛ぶなか、彼は「ん? (ベースの長谷川)正? あそこに〈正〉って書いてありますけど」。

国技館の内部には位置を示す方角が表示されているのだが、確かに〈東〉〈西〉〈正(正面の意、だと思う)〉と書いてある。場内に笑いが起こると、「このラッキーな流れで……」と各エリアごとに「東! 踊りますか?」「西!」「アリーナ!」「正(ただし)! 踊りますか?」と繰り返し、ラストで「両国国技館! 全員踊れますか!?」と煽ると“懺悔は浴室で”へ突入。高速で点滅するライトを浴びながら、この日初めてギター・プレイから解き放たれた有村は、不穏なダンス・グルーヴに合わせて舞台上をくるくると舞う。間奏ではサーチライトで場内を照らし出しては観客を挑発して仄暗い感情を噴出させ、ドギツイ赤と青のライトが旋回しては邪悪な空気を攪拌する。かと思えば清澄なトライアングルの音が響き渡って――この日、二度目にスクリーンに映し出された曲名は“ムーンライト――――。”。

緑色のレーザーと黄色のライトが鮮やかなコントラストで場内をゆったりと照らし、素朴なタッチのイラストをモチーフにした映像が、たまらないノスタルジーを呼び起こす。アルバム『アンモナイト』のキーワードである〈夜〉を象徴するこの楽曲のセンティメンタリズムを浮かび上がらせた後は、そのムードを引きずったまま“アリア”へ。

「千葉出身なので、東京都内に出る総武線のなかでいつも国技館を見ていた」と語った長谷川、「ようこそ! 幕内バンギャども」という第一声で場内の失笑を誘ったナカヤマアキラ(ギター)のMCを経て“退屈マシン”から斬り込んだ後半は、“テトリス”“バリア”とマッシヴなナンバーをゴリゴリと畳み掛けて場内を扇動。ドラムセットの前で向かい合い、メタル・マナーで火花を散らす長谷川とナカヤマをバックに、有村が「両国! まだまだ暴れ足りないでしょ!? 知ってますよ? その心のすべてを。暴れる曲いきますか? 国技館でどすこいしますか!?」とさらに急き立てると、“ヘイトレッド・ディップイット”ではOiコールと激しいヘッドバンギングが勃発し、会場全体が豪快に波打つ。

急降下するようなドライヴ感と回る赤色灯に追い込まれ、“デュエット”ではその爆発的なカオスが最高潮に――すると、突然暗転。しんとした闇のなかで有村が爪弾くアコギに3人のバンド・サウンドが寄り添い、ステージに灯りが戻る。流麗なギターのアルペジオが癒しの雨のように降り注ぐと、映像のなかの荒涼とした風景に、はらはらと花弁が舞い散る。そのセンシティヴな情景は、〈自身の肉体が失われたとしても、こころの形は残ってほしい〉という切実な祈りの歌と重なり合って、聴き手を優しく包み込む。

有村が深々と頭を下げると、会場からは温かな拍手が。するとメロトロン(?)を逆回転させたような音がフェイドインし、いよいよ本編のエンディングが訪れる。

――「Thirteenth Friday」。

背後のスクリーンに曲名が投影されると同時に恍惚と陶酔の轟音が場内を覆い尽くす。〈we change tonight…〉と最後のフレーズを繰り返して消えゆく有村の歌を引き継ぐかの如く、大きくうねりながら咆哮を上げるフィードバック・ギター。その渦とシンクロするように、スクリーンのなかでマーブル模様を描いていた色彩が徐々に球体を成し、その球体が連鎖して螺旋を描いていく――冒頭の“ブルーバック”とは逆の方向に、今度は奥から手前へと果てしなく上昇し続けながら。まるで、深く潜り込んだ記憶の底から、〈いま〉へと回帰するようだ。徐々に白んでいく残響を残して4人が去った後に会場から沸き起こった拍手は、とても厳かなものだった。

“プラネタリウム”で始まったアンコールでは、各メンバーがツアーの思い出を吐露。

「今日が楽しみすぎて、どうにかなるんじゃないかと思ってました。胸いっぱいで、言葉にならんとよ。名前だけでも覚えて帰ってください!」(佐藤ケンケン、ドラムス)。

「俺、暑いのホント苦手でね、(ツアー間の)夏はあんまり家から出なかったんですよね。で、何をしてたかっていうとちょっと二次元の世界にね。ガンダムとかね、ガンダムとか」(長谷川)。

「大阪で、トラブルに似たことがありまして。このギターにはこのストラップの長さ、って決まってて、長いぶんにはまだいいんですけど、その時はこの長さ(例えるなら、サンボマスターの山口隆ぐらいの短さ)で(スタッフから)渡されて。これは難しいです! (有村が)MCしてる時、一人でワタワタしてて(笑)」(ナカヤマ)。

そして最後に、「今回〈アンモナイト(大)(小)〉とあったんですけど、いろんな想いで作ったアルバムで。ツアーもたくさんやれて、自分でも気付かなかった曲への想いをいろいろ発見できて、すごくありがたかったです」と感謝の意を告げる有村。

しみじみとこの7か月を振り返った後は、「『アンモナイト』に入ってる曲で、いちばん暴れられる曲は!?」という問い掛けから通常盤のみに収録の“spooky”へと雪崩れ込み、「両国! 終わりたくねぇよ! マジで。まだまだ遊んでくれますか!?」と開始した2度目のアンコールでは、“Ghost”をプレイ。ハードコア~ヘヴィー・ロックが入り混じる鋭利なリフが猛り狂うなか、ふと気が付くと、これまで静止していた紗の幕が時の流れを取り戻したように揺らいでいる。〈いま〉へと回帰したところで、さらにこの先へと向かう。そんな意志を感じさせる演出に、〈ああ、ここでフィニッシュだ〉……と思いきや。


長谷川「ホントはさ、ここで美しく終わるはずなんだけど、もうファイナルじゃん?」


ナカヤマ「(有村に向かって)早く楽器持てよな。さっき、正、ナカヤマ、ケンケンで、オマエに黙って決めてたんだ。さあ、何をやるんでしょうね?」


有村「(激しく動揺しながら)…………“ぬけがら”ですか?」


ナカヤマ「俺らも鬼じゃないんで(笑)、練習したものとか……ツアーでやったものをね」





……と、有村に対してはサプライズ、そして観客に対してはトリプル・アンコールとして、突如ここで“メランコリック”を披露。有村が予想したように、終演後はまさに抜け殻になろうかというほどのパワフルなプレイを繰り広げる4人と、力一杯のOiコール/シンガロングで応える客席。会場全体で限界超えの熱量を放出し切ったところで、この日の演奏は本当に終了した。

締めはメンバー4人、そして観客全員が手を繋いでの大ジャンプ。有村の「アンモナイト! 無事終了!!」というコールでフィナーレを飾り、その後、エンドロールを通じて12月28日、29日に行われる年末公演〈水曜スペシャル〉〈木曜スペシャル〉、今回の両国国技館公演のDVD化、そして来年2月(仮)にはニュー・シングルも控えていることがアナウンスされた。『アンモナイト』に封じられた記憶を辿る旅に別れを告げ、彼らはこれから新しい時を刻んでいく。





そして最後に。「まったくためにならないから、自分のMCは全カットされる」とナカヤマはステージ上でボヤいていたが、話がブレるので、このレポにおいても80%ほどカットさせてもらった。ライヴDVDではどれほどのMCがサヴァイヴするのか、秘かに注目したいところである。



Plastic Tree TOUR2011 「アンモナイト(大)」 千秋楽 セットリスト


1. ブルーバック
2. みらいいろ
3. アイラヴュー・ソー
4. 水色ガールフレンド
5. 雪月花
6. バンビ
7. 懺悔は浴室で
8. ムーンライト――――。
9. アリア
10. 退屈マシン
11. テトリス
12. バリア
13. ヘイトレッド・ディップイット
14. デュエット
15. さびしんぼう
16. Thirteenth Friday

―アンコール―
17. プラネタリウム
18. spooky

―アンコール2―
19. Ghost

―アンコール3―
20. メランコリック

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