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連載/コラム

第51回――永遠のタミー・テレル

連載: IN THE SHADOW OF SOUL

掲載: 2010年12月10日 23:22

更新: 2010年12月10日 23:22

ソース: bounce 327号 (2010年11月25日発行)

文/林 剛

 

マーヴィン・ゲイのデュエット相手……なだけじゃない彼女のすべて

 

 

その美貌と美声ゆえに、24歳という若さでこの世を去ったことが40年経ったいまでも惜しまれているタミー・テレル。マーヴィン・ゲイとのデュエット・パートナーとして有終の美を飾ったことが、夭折したという事実をより美化してもいるのだろう。67年10月、大学の学園祭でのステージの最中にマーヴィンの腕の中に倒れ込み、脳腫瘍と診断された彼女は、その後8回もの手術を繰り返し、70年3月16日、病気との闘いの末に他界した。

トーマジーナ・ウィニフレッド・モンゴメリーとして、1945年4月29日にフィラデルフィアで誕生した希代の歌姫はしかし、マーヴィンと出会う前からキュートな歌声で世の男性諸氏を参らせてきたのだった。ミドルクラスの家庭に育ち、トミーと呼ばれていた少女は早くから音楽に興味を示し、教会のクワイアに参加する傍ら地元TV局の番組に出演。エラ・フィッツジェラルドなどに憧れ、歌の練習に励んでいた。が、11歳の時、ショウのリハーサルからの帰宅途中、3人組の男にレイプされてしまう。それは深い傷となったが、これを機にシンガーとして逞しく成長し、タミー・モンゴメリーと名を変えた彼女は、15歳になる直前にセプター/ワンドと契約。チャーミングな中にも哀感が滲むデビュー曲“If You See Bill”など、ブリル・ビルディング系ポップスとも親和性の高い都会的で洗練された楽曲は大ヒットにはならなかったものの、地元の高校で男子生徒をメロメロにしていたという美貌(と歌唱力)はたちまち評判となる。ジェイムズ・ブラウンの目に留まるのも時間の問題だった。


タミー・テレルが69年に発表した唯一のソロ・アルバム
『Irresistible』(Motown)。別掲の編集盤に丸ごと収録!

JBのリヴューに参加するようになったタミーは、63年に彼が主宰するトライ・ミーからシングル“I Cried”を発表。17歳とは思えぬほど大人びた歌に驚くばかりだが、少女時代に辛い体験をした彼女は、心から泣くことができたのかもしれない。しかし、試練は続く。JBとは2年ほど親密な仲になるも暴力を振るわれ、逃げるようにしてその元を去ることになるのだ。そうしてチェッカーに移籍するが、その後ベリー・ゴーディJrにデトロイトでのパフォーマンスを見初められたタミーは、65年、20歳の誕生日にモータウンと契約を果たす。ゴーディから〈セックス・アピールのある名前を〉と、タミー・テレルという芸名(〈Tammy〉だった綴りも〈Tammi〉に)を与えられた彼女は、後にソロ・アルバム『Irresistible』(69年)にまとめられることになる楽曲をジョニー・ブリストルらのもとで録音。ここで聴ける歌には、早くから大物たちと渡り歩いてきた彼女らしく自信に満ち溢れ、〈ひとりシュプリームス〉的な華やかさがあった。

モータウン入社後はデヴィッド・ラフィン(テンプテーションズ)とのロマンスも同時進行。66年にはプロポーズを受けたともいうが、しかしラフィンが妻子持ちだという事実が発覚。彼を責め立てたタミーは逆に暴力を振るわれ、結果破局するが、そんな彼女のデュエット相手に、ラフィンとは正反対のジェントルで内向的なマーヴィン・ゲイが選ばれたというのは興味深い。私生活では男に翻弄されてきたタミーも、歌のうえではマーヴィンをリードするような小悪魔っぽい役割を演じることになったのだ。

闘病中のタミーに代わって作者のヴァレリー・シンプソンが数曲を歌ったとされているマーヴィン&タミーの最終作『Easy』(69年)ではあるが、ヴァレリー本人によれば実際にすべてタミーが歌っていたのだという。まさに歌に捧げた人生。彼女の歌がいつまでも輝きを失わないのは、彼女が歌への一途な思いを最期まで抱き続けたからなのだと、改めて思う。

 

▼タミー・テレルのルーツ的なシンガーたち。

左から、エラ・フィッツジェラルドの55年作『Lullabies Of Birdland』(Decca)、ダイナ・ワシントンの編集盤『Gold』(Verve)

 

▼タミーを支えた面々の作品。

左から、アシュフォード&シンプソンの73年作『Gimme Something Real』(Warner Bros.)、ジョニー・ブリストルの76年作『Bristol's Creme』(Atlantic)

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