ブロンクス「当時はレアグルーヴもすごい紹介してますよね。(上野に向かって)〈そのレコード、オレが買う!〉は、おすすめだよ。ほぼ毎日レコ買ってる。ビビるよ、本当に」
上野「(本を読みながら)すごいっすね。で、いいこと言ってる。〈男には勝負しなきゃいけない場面がある〉んだ……」
ブロンクス「あと〈いつまでも、あると思うな親とレコード〉とか(笑)」
JOE「レコ屋行っても、なんかコメント書いてあるなあ、と思うと、須永辰緒、MURO、っていう名前が、大抵あるよね」
ブロンクス「その後辰緒さんって、小西(康陽)さんだったりとか、渋谷系とも合流したじゃないですか。その時はもう、RHYTHMはなくなってたんですか?」
JOE「もう完全になくなった頃。で、渋谷のCAVEでやりはじめたのかな。それから94年くらいにOrgan Barができたんですよ。当時CAVEで、ミロスと同じノリで遊んでたら、辰緒さんに〈俺は変わったんだからやめろ〉って怒られた(笑)」
上野「あはははは」
ブロンクス「〈そのレコード、オレが買う!〉の帯に〈データコピーに明け暮れるDJリスナーたちは刮目せよ!〉って書かれてるんですよ。ダウンロードばっかりしてないで、フィジカルにサクサクしに行かないとダメだよって(笑)」
上野「やっぱそこでフィジカルに繋がる、っていう(笑)」
ブロンクス「いとうせいこうさんの、〈DJは職業じゃない、病気の名前なんだ〉って帯の言葉も良いですね」
JOE「だからいまの子は病気じゃないんだろうな、っていう。健康的なんだね。まあ逆に、日本語ラップしか聴かない子がいるっていうのも、ある意味いい時代なのかもしれないんだけど。俺らの時代は、日本語ラップ自体少なかったから」
ブロンクス「思うんですけど、この前〈HIPHOP最高会議〉に、アフリカ・バンバータが降臨したっていうのを聞いて、千葉さんは日本語ラップ・シーンからは無視され続けたけど、ファンク・サイン立ててヒップホップと交信し続けてたら、ついにマザーシップが来たんだなって。映画〈レポマン〉のラストみたいな(笑)。やっぱそこで日本語ラップだけ聴いてたら、目の前にバンバータがいてもわからないわけですよ」
JOE「たぶん感動もないと思うよ。太った黒人のオッサンが来た、としか思わない。でもたぶん、そういう時代なんだろうし」
ブロンクス「バンバータを知って、“Lookin' For The Perfect Beat”の意味をいま一度考えてみろと」
上野「最近は辰緒さんと会ったりするんですか?」
JOE「いや、全然会ってない。最後に会ったのはたぶん、BBPのいちばん最初の展示会なんかで、DJ DOC. HOLIDAYが復活する、っていう時だな。もうその時は、当時の選曲のまんまで」
ブロンクス「最近のレコバッグには絶対入ってないでしょ!っていう粋ですね」
JOE「久しぶりにそん時に、45キングの“900 Number”を、みんなで〈バラバラバラバーバーバー〉って、合唱。声枯れるまで合唱ですよ(笑)。昔からの伝統芸能だったらしくって」
上野「初めて聞いた(笑)」
JOE「あれだよ、そういえば俺、DJ CELORYとかも最初はミロスで知り合ってるよ、たぶん。あとコンちゃん(DEV LARGE)も、PMXとかMAZZさんが連れて来てた。日本に帰った時にはいつもミロスに来てたんだ。NYにいるんだよね、って話とかしてて」
上野「すげえなあ。クボタさんとDEV LARGEさんは同級生なんですよね。ディグが繋ぐコネクションすね」
JOE「まずは手ェ汚して来い!ってやつですよ。僕いま下北だから、すごい汚しやすい状況ではあるんだけどね(笑)」
上野「指真っ黒になるまーでー♪みたいな」
JOE「だって(ディスク・)ユニオンだけでも端から端まで見終わったら、もう手汚いもん」
ブロンクス「CDは汚れないっすもんね。CDをディグする時はもう、老眼のおじいちゃんみたいに腰を曲げて顔を近付けて……」
JOE「アナログはどーしても、引っ張り上げなきゃいけないからね(笑)」
上野「それがサクサク、っていうことですよね。要は」
ブロンクス「JOEさんの近況はどんな感じなんですか?」
JOE「えーと、いま、一生懸命お人形さん作りしてるので(笑)。ぜひBBPの展示会で発表できると思うので、驚いてくれれば、と思います」
ブロンクス「肩書き的には何になるんですか? Bボーイ……」
JOE「Bボーイ・モデラー? Bボーイ原型師、みたいな?」
上野「原型師(笑)」
JOE「できるだけ、〈Ultimate Breaks & Beats〉のものを、全部立体化しよう、っていう。だから、違うほうのディグだよね、あれも。一応彫る(掘る)ことに変わりはないんで(笑)」
上野「オチがつきました!」
ブロンクス「もし海洋堂の人とか見てて、Bボーイ・シリーズ、〈Ultimate Breaks & Beats〉シリーズが出したくなったら、JOEさんのやつを原型にして、出してくれ」
JOE「だから最近普通の、美少女フィギュアのホームページたくさん見るようになっちゃって(笑)」
――ちなみに、当時はバンド・ブームをまだ引きずっていた時代だったと思うんですが、その辺との繋がりはなかったんですか?
JOE「なかったんだけど、1回だけ〈バンドやろうぜ〉に取材されたことがあって。YOU君とちっちゃい枠のインタヴューで出たことがある。〈どういうつもりでこういう音楽やってるんですか?〉って(笑)。」
一同「(爆笑)」
▼サイプレス上野とロベルト吉野の作品