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第188回 ─ 祝デビュー30年! どうしてスリッツはこんなに気持ちイイの?

スリッツを巡る音楽の果実はここに一本のトゥリーを生んだ (その1)

連載
360°
公開
2009/10/21   18:00
ソース
『bounce』 315号(2009/10/25)
テキスト
文/カシワサン、北爪 啓之、柴田 かずえ、山西 絵美

あふりらんぽ
『スートブレイコー』
 Pヴァイン(2007)
単に野蛮なだけなのか微妙な雰囲気。天衣無縫なルックス。土着信仰めいた呪術的グルーヴが渦巻くズンドコ・サウンド。すべてにおいてまさにスリッツの隔世遺伝とも言うべき2人組だ。天然の白痴美は軽々と時代も国境も越えるという証し。*北爪

MARK STEWART
『Edit』
 Freaks R Us(2008)
この13年ぶりとなる新作にて、〈髪型や服で人を判断すんじゃねえよ!〉と叫ぶヤードバーズの“Mr You're Better Than I”をカヴァーする際、アリに援護を要請したマーク。彼らはいまも10代の頃と変わらずに互いを刺激し合い、そのパンク・スピリットに磨きを掛けている。*柴田

THE SHAGGS
『The Shaggs' Own Thing』
 Rounder/Red Rooster(1975)  
スリッツの演奏がいくら稚拙でも、この素敵なルックスの先輩方には到底敵わない。前代未聞のダメ・スキルを誇る姉妹バンドだが、彼女たちはすこぶる真剣である。割れ目ちゃんは〈ヘタでもいいや〉精神だが、シャッグスは全力でヘタなのだからこちらのほうが一枚上手? *北爪

Killa Sista
『From Far East』
 Killa Sista Far East(2009) 
初の女性パンク・バンドがスリッツならば、こちらは(恐らく)初の女性ダブ・バンド。スリッツとの共演経験も持つ3人組で、タイトなドラムと腰の据わったベース、哀愁たっぷりのメロディカが格好良いのなんの! 物珍しさ以上に演奏にも定評のある実力派で、そこは割れ目との大きな違い(失礼!)。*カシワ

M.I.A.
『Kala』
 XL(2007) 
初作の成功によって手にしたカネで世界を飛び回り、アボリジニの音楽やソカ、ボリウッドなどを呑み込んで、最高にホットな〈アーバン・プリミティヴ〉を形成したマヤ。彼女の作る下世話なコスモポリタン・ミュージックに刺激され、スリッツが本格復帰を決意した……っていうのはただの憶測ですが、あながち間違ってない!? *柴田

MGMT
『Oracular Spectacular』
 Columbia(2008) 
魅惑のサイケデリアに身体を委ねていると、遠くのほうからズンドコズンドコと大地の音が……。MGMTを筆頭とする昨今のブルックリン勢に顕著な多国籍感は、スリッツからの影響が濃いような気がする。そもそもトーキング・ヘッズみたいな知的さは希薄だしね。そんなことを考えながらこの半裸ジャケを眺めていると、あらま、『Cut』に見えてきた! *柴田

PEACHES
『I Feel Cream』
 XL(2009) 
スリッツが前ならば、ピーチズのは後ろ(エッ、何の話だって!?)。PTAから巴投げを喰らいそうなこのネーミングが物語る通り、みずからのオンナという性を決して媚びることなく、むしろあけっぴろげに開陳しちゃってるあたりに清々しいほどの近似性を感じる。*北爪

PUBLIC IMAGE LIMITED.
『The Flowers Of Romance』
 Virgin(1981) 
PILのキース・レヴィンがスリッツ結成前のパルモリヴやシド・ヴィシャスらと組んでいた、幻のバンドの名前を表題に掲げた3作目。ジョン・ライドンの奥さんの連れ子がアリという妙な因果もある。アレコレ抜きにしても超先鋭的な傑作ですな。*北爪