III その後の流れと現在のシーンに見るカリプソの影響
カリプソは、ご近所であるジャマイカのダンスホール・シーンとも刺激し合いながら進化していきます。マイティ・スパロウらが推し進めたカリプソの発展=〈ソカ〉により、ダンス・ミュージックの仲間入りを果たし、どんどんアッパーなリズムへ。近年では、TOKがカリプソ・ローズの“Fire In Me Wire”をカヴァーしたというのも重要ですね。一方、ジャマイカでのスカやロックステディの衰退と同様、トリニダードにおけるオーセンティックなカリプソの影が薄くなったのは残念なことであります。
ここで英米をはじめ世界的に見られるカリプソの影響にも触れておきましょう。カリプソは戦前から広く紹介され、当時の英米のミュージシャンの関心を集めました。ディジー・ガレスピーをはじめ、ジャズメンがこぞってカリプソ曲を取り上げた40年代。そして、70年代初頭にはヴァン・ダイク・パークスの名作『Discover America』でもカリプソは大きなキーワードになっています。近頃だとリリー・アレンやエル・グィンチョらルーツ音楽を自分流に巧く料理しているアーティストが、カリプソを非常にユニークに採り入れているのも興味深いですね。また、日本でもその人気は根強く、なかでもDouble Famousが取り上げた越路吹雪ヴァージョンの“Shame And Scandal”こと“オー・パパ”は名曲名唱!
そんなこんなでいろんなカリプソがあります。ルーツ音楽のひとつとして、非常に重要で個性的な音楽、それがカリプソ。せっかくの夏ですからね、たっぷり浸ってみてはいかがでしょう。一歩踏み込めば、もっと深い魅力が待っていますよ。