1. 『Ticket To Ride』
オリジナルはビートルズの66年作『Help!』(Apple/Capitol)に収録。ジョン・レノン本人が〈元祖ヘヴィー・ロック〉と謳うほどハードなこの曲を、カーペンターズは分厚いオーケストラ・サウンドを用いたスロウ・バラードにガラリと変え、デビュー・シングルに採用している。
(山西)

2.『 (They Long To Be) Close To You』
もとはバカラックが俳優のリチャード・チェンバレンに書いた曲だが、全米No.1を獲得していることもあってカーペンターズ編のほうがよく知られている。中~低音域を行ったり来たりする難易度の高い後者の旋律にポール・ウェラーやRie Fuらがこれまで挑戦しており、なかではCubic U名義作『Precious』(EMI Music Japan)での宇多田ヒカル(当時14歳)の初々しい歌が、父の微妙なコーラスと併せて印象的。
(山西)
3. 『We've Only Just Begun』
ロジャー・ニコルズとポール・ウィリアムズのコンビが書いたウェディング・ソングの定番。甘いメロディーが特にラヴァーズ系の歌い手から愛され、ジョン・ホルトやキャロル・トンプソン、ビティ・マクリーンが録音している。ここでは2008年作『True Singers: Sadiki Meets Sandra Cross』(Skinny Bwoy)で聴けるサンドラ・クロスの歌声を推しておこう。
(山西)

4. 『Rainy Days And Mondays』
こちらもロジャニコ&ポール組によるメランコリックな一曲。オリヴィア・ニュートン・ジョンやサラ・ヴォーンもカヴァーしているが、湿っぽいカレンの歌唱がやはりいちばん落ち着く。なお、ロジャニコが11年ぶりに復帰した日本編集の95年作『Be Gentle With My Hear』(トイズファクトリー)では、ポールを迎えてソフト・ロック仕立てにセルフ・リメイク。
(山西)

5. 『Superstar』
オリジナルはデラニー&ボニー。スターと関係を持ったグルーピーの空しい恋を描いた歌で、ベット・ミドラーやソニック・ユースも取り上げているけど、カレンのうら寂しい歌唱には敵わないか。ルーサー・ヴァンドロスが83年作『Busy Body』(Epic)にてアレサの“Until You Come Back To Me”とメドレーで披露、〈待つ女〉の哀しさを倍加させた濃密な変則技も絶品。
(出嶌)
6. 『Yesterday Once More』
スピナーズやサンチェス、青江美奈、BEGIN、畠山美由紀らも歌った名曲。詞と曲が懐古性を重ね着したノスタルジー歌謡の美しい最高峰だろう。が、ゆらゆら帝国のベスト盤『1998-2004』(ミディ)に収められた坂本慎太郎の自作詞カヴァーは、そんな評価もブッ飛ばす朴訥アシッド童謡。〈忘れたくない思い出が消えかけている~♪〉……って、忘れられないよ。
(出嶌)
7. 『Top Of The World』
〈彼氏ができて有頂天〉といった内容の歌詞をカントリー・タッチの若々しいサウンドに乗せたこの曲は、アマチュア時代にリチャードが書いたもの。その能天気なムードだけを抽出したコンピ『Punk It! Gold!』(EMI Music Japan)収録のベルズによるメロパン・ヴァージョンをはじめ、少年ナイフや倉木麻衣など原曲に負けず劣らずの溌剌としたカヴァーが目立つ。
(山西)
8. 『Please Mr. Postman』
もともとはマーヴェレッツによるモータウン初の全米No.1ソング。軽快なビートルズ版を下敷きにしたと思しきカーペンターズのヴァージョンは、兄妹に最後の全米No.1ヒットをもたらしている。で、カレンの歌を“Oh Yes”にて速回しループしたのがジュエルズ・サンタナ。『What The Game's Been Missing!』(Def Jam)を聴いて驚け!
(出嶌)