
今月のスナップ:IKBスタイルに対抗する(?)異様な着こなしを披露!
ダース で、キャリアに反してなかなか作品が出ないところに、急にやる気を出したのが、この『BLACKSMOKER』なんだよね。
ブロンクス 俺は、こんなにバッズを全面に出したジャケを日本語ラップで見たことなかったから、当時は結構ショッキングだったよね。
ダース それをチラッと匂わせる程度のものはいくらでもあったけどさ。もうサイプレス・ヒルかってくらいの全面解禁っぷりだった(笑)。
ブロンクス IKB(池袋)流のタイトなフロウはいまでもMONJUのPUG君とかBES君とかに、池袋の伝統として引き継がれてるよね。
ダース 凄い最近の話なんだけど、CHAMOISっていう、JOMO君とKAZUYAってヤツのグループがあって、そのKAZUYAがTHINK TANKの後輩なのね。そいつの結婚式にK-BOMBさんとJUBEさんが来てて。ビンゴ大会があったんだけど、商品がW杯予選の日本×オーストラリア戦のチケットだったんだ。そしたらK-BOMBさんが突然「サッカーだったら絶対俺でしょう、任せとけよ」って言い出して。全然そんなイメージないのに。そもそもビンゴだから「サッカー=俺だから」で当たるわけないじゃん(笑)。だけど、KAZUYAが「特賞は……K-BOMB!」って。ホントに当てて。
上野 スゲえなぁ……。
ダース 鬼だと思ったけどね。けど、その引きの強さを音楽方面では敢えて発揮しないっていうか。メジャーでディールを取ろうとか、そういうことには使わないんだよね。
ブロンクス K-BOMB君は、ミックスCDとかは結構出してるよね。
上野 数、むちゃくちゃありますからね。CD-Rの盤面には蛍光マジックでゴニャゴニャって、アブストラクトな何かが描いてあるんだけど、全部それが違う。だから、レコ屋で働いてて、返品とか言われても、何がなんだか分からないんですよ。多分コレだろって感じで(笑)。クレジットとか一切ないから。すごいなあって。
ブロンクス 上手く言えないけど、日本語ラップ界の山塚アイみたいな感じだよね。スタイルを真似してるって言う意味では全然なくて、存在感のエッジが似てる。
上野 うん、確かに。
ブロンクス 超オリジナルだけど、「これはヒップホップかどうか」なんていう必要もなく、「K-BOMBさんだから、今回も(ヒップホップの枠が)広がったんだろう」っていう(笑)。
ダース だから、〈セルアウト〉とか〈ヒップホップだ/ヒップホップじゃない〉とか、そういう枠組みからまったく逸脱しちゃってるから。
上野 超越しちゃってますね。
ダース MINGAってフリー・ジャズ・バンドとやってるJAZZ NINOとかも、音的にはパブリック・イメージのヒップホップとはまったく違うんだけど、フィーリングと雰囲気がスゲえヒップホップなんだよね。
上野 〈B-BOYがやれば何でもヒップホップ〉っていうのの典型ですよね。
ダース そうそう。要は、当人がB-BOYか否かっていう問題。
上野 〈RAW LIFE〉でライヴ見たんすけど、THINK TANKが出てきたとき、ダビーなディレイが超かかりまくってたんで、空気がハンパなくて。で、あのMCたちじゃないですか?
ブロンクス ラップにもディレイかけるよね。
上野 だから、凄かったですよ。砂煙のなかで、あの人数で。ひたすら音飛んでるし、意味わかんねえと思いながら、チラッと(ロベルト)吉野を見たら、変な女に追っかけまわされたりしてて。すげえイイ景色だなと思って(笑)。
ダース 最近は、NIPPSとも仲良くなってるからさ。K-BOMBさんとデミさん(NIPPS)はいつも一緒に飲んでる。
ブロンクス あ、そうだよね。デミさんの存在はTHINK TANKにとってのスパイスだよね。最近はそこにK-MOONも加わって。日本のヒップホップの正統派なクレイジーな人たちが集結してる(笑)。
上野 ……アルバムの話、全然してないっすね(笑)。
ダース でも、いま話してきたことがみんな詰まってるのが、このアルバムなんだよ。
上野 リリックにしてもおもしろい。タイトだし……実は、日本語ラップの引用が多いんですよね。しかも、その引用の仕方が上手い。
ブロンクス 好きゆえに、(地下に)潜ったんじゃないかな。みんながヘッズのままだったら、THINK TANKはここまで異端児にはなってないと思う。みんな変にキラキラしちゃったから、あの人たちは闇に留まったっていうか。
ダース だから一時期、ECDとかイルリメとかと一緒にやってんじゃないかな。
上野 そういうのも納得が行きますよね。
ダース だから、俺はK-BOMBさんたちと会うとき、ちゃんとしてないと話ができないって気持ちがある。あの人たちは超ピュアだから。浮ついちゃったり、後ろめたいところがあると……。
上野 見抜かれるんじゃないかって思いますよね。いやあ、それ凄いわかるな~。
ブロンクス それは俺にとってのヨシ君(般若)と一緒だね。そういう人はいるよね。
ダース BESとかMONJUとか、IKBの人たちも同じだと思うんだ。ルールというか、キープしなきゃいけないものとして、THINK TANKのあの雰囲気がある。
上野 そうっすね。みんなフード被ってるもんな。MONJUのフードの被り方とか異様でしたもん(笑)。あれがIKBスタイルなのかも。
ダース そこからDOWN NORTH CAMPとかメシア(THE FLY)とかにも繋がって来る系譜がある。漢もいまbedに出てるけど、初期のMSCが持ってた雰囲気はTHINK TANKに近いものがあったから。
ブロンクス NORIKIYOも、東京で気が合うのは、渋谷より池袋の連中だって公言してるからね。
ダース bedがおもしろいのは、その一方で、KICK THE CAN CREWの〈DYNAMITE〉なんかもやってるところなんだよね。ダンス・イヴェントも結構あったりして、変なバランス感覚がある。それこそ、うちらもずっとあそこでやってるし。特殊なカルチャーだよね。
ブロンクス スキルが高くてモラルが低いみたいな。不思議なハコだよ。
ダース 俺のカミさんも、前の彼女も、前の前の彼女も、全部bedで出会ってるという。
上野 bedのお陰ですね。これは載せましょう!
ダース 昔は本当にベッドがあったんだよ。
ブロンクス そうそう! エリック・ヘイズがデザインしたベッドがあったんだよね。
ダース 明け方、そのベッドで酔っ払った女の子が寝てるのがすげえ良くて。俺らも二十歳くらいで、そのまま本番に持ち込めんじゃないか?くらいの雰囲気が、そのベッド周辺にあった。
上野 いいなあ~。なんか最後はbed回想録みたいになっちゃいましたけど(笑)。
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